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第二話 絶望

時は、少し遡り 私、花園 香が異世界へ召喚される少し前・・・



「やった~~~!! 赤点ギリギリセーフ!!これで、お小遣いを減らされないですむ!!」

私は、マルとペケの数がほぼ、同一の答案用紙数枚を握りしめて帰宅途中の通学路でガッツポーズをしていた。


「まったく、香は~。もうすこし頑張れば、もっと良い点採れる筈なのに・・・。」

幼馴染で親友の秋風 楓に呆れたような溜息をつかれる。


「いいんだよ~私は! だって進学するわけじゃなく、実家の花屋を継ぐんだから・・で?そういう楓は、どうだったの?」

「この通り・・・。」


ヒラリと楓の見せた答案用紙には、明らかにペケが一つも見つからないまさに、満点の答案用紙だった。


「はぁ~、さすが才色兼備の委員長さまだねぇ~。私たち庶民とは、頭のできが違いますよ~。」

「もう~からかわないでよ~!!」


エリート弁護士の父と美人モデルの母を持ち、むかしから何でもそつなく熟せる楓は、正義感が強く真面目で将来は、父親のような弁護士を目指していた。

そんな楓の住む家の近くに小さな古い花屋が一軒あった。その花屋の一人娘こそが私、花園香である。

優秀で美人な楓と対称的に成績は平均的、美人でもなければブスでもない、ごくごく一般的な人間だった。


しかし、そんな私と楓は、小さい頃から、ケンカなどは、たまにはするが大の仲良しだった。



・・・そう、あのときまでは、



「それにしてもさぁ~、お腹空いたねぇ~。何かコンビニで買って帰ろうよ!」

「こら! 買い食いは校則違反だよ!」

「う~、でたよ・・委員長キャラ・・そこは楓のわるいところだと私は思うなぁ~。」


そんな、ありふれた日常の会話をしていた私達の足元に突如、赤い光の魔法陣が浮かび上がった。


「な、なに?これ!? なんなの・・・?」

「「きゃあああああああ~~~~~」」


赤い光が私達二人を包み込んで、そのまま光は消えた。私たちごと・・・


次に私達が目を開いた時、見知らぬ豪勢な建物の中で見慣れない豪華な服を着た大勢の大人たちに囲まれていた。

「よくぞ、まいられました ”勇者さま”我らは、貴方様の召喚を待ち望んでいたのです。この世界を救う事のできる救世主よ!」

そんな、豪勢な服装の人たちの中、ひときわ豪華な金の刺繍をほどかされた赤いマントを羽織、金の王冠を被った、いかにも王様てきな人が私達に声をかけてきた。


混乱する私達・・・いや私を置いて、楓との話を進める王と臣下たち・・・


「あ、あの~・・・すみません、私は・・・?」

私が勇気を持って話しかけると私の存在に気付いたのか私の方を見る。


しかし、私を見る者、全ての目は、相手を比較し蔑む目だった。


「ちっ・・・今回の召喚でも分かれてしまったか・・・。」

「・・・・え?」


王のこぼした言葉に対し、どういう事?と尋ねようとした私は後ろに控えていた騎士たちに取り押さえられ、縄で縛られた。


「な、なんで・・私が縛られなければいけないの!?」


「だまれ!! 貴様という存在が勇者さまを弱体させる要因だとなぜわからん!!」

「・・・・・は?」


私が・・・勇者を弱体化させる? つまり楓を?


「貴様には、一週間後 大広場の処刑台にて死罪を言い渡す!! それまでの間、牢獄にて貴様の罪を悔いるがいい!! これは王命である!!」

異世界に召喚された瞬間に罪人にされた私は、牢獄へとひきたてられることになった。


「ちょ・・・ちょっと!! い、意味が解らないんだけど!! どうして私が殺されなくちゃいけないの!? か、楓~!!助けて! 助けてよ!!」

私の悲鳴のような叫び声もむなしく、一週間の間、牢獄の軟禁されることになった。


そこからの日々は、日本に伝わる地獄が生ぬるく感じる程の仕打ちだった。毎朝拷問から始まり拷問で終わる日々、

身体には、絞めつけられた縄の痕に焼き鏝などの火傷痕、歯は折れ、首を絞めつけられた後遺症で声も出なくなっていた。


この世の全てに絶望した私に一縷の希望が降って来た。なんと、楓が牢屋ごしに面会に来てくれたのだ。


「あぁぁ・・・うぁぁ~~」

声なき声で必死に伝えようとする。やっとこの地獄から解放される! 楓と一緒にあの懐かしい日常に帰れると希望を持った瞬間


「・・・ごめんね、香。 これも、この世界に生きる全ての人々の為なの・・・香ならわかってくれるよね。」


「・・・・・・」

この世界の勇者に選ばれた私の親友は、この世界の人々を救済するために、私という親友を見捨てたのだった。


そうして、希望を一切持つことなく絶望に包まれた私は、一週間後、処刑台にて親友だった”人間”に首を落とされたのだった。



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