第10話 魔王の義務と心情
「・・・・楓?というのは・・・ひょっとして、君と一緒に召喚された勇者の事かい?」
「はい! 私は、楓を殺す為・・復讐する為に魔王に転生したんです!!」
真顔で質問の対象を確認する紅太郎に(それこそが私の唯一の目的)と言わんばかりに前のめりになって次の言葉を期待を持ちつつ待つ。 しかし・・・
「「「・・・・・・・・・。」」」
しばらくの間、三人の先輩魔王は、顔を見合わせ口を閉ざししばらく黙っていたが、やがて
「あ~それは、ちょいっと難しい話だぜ。」
最初に口を開いたのは、剛毅だった。
「なぜですか!!」
「”勇者”・・しかも、魔王が生まれるのとほぼ同時に生まれる勇者は勇者の中でも特別でな・・・基本よっぽどの事が無い限りは魔界に攻めて来ねぇ~。」
「そ、そんな・・・だったら私が直接人間界に・・・」
「駄目だよ!」
(乗り込んで!!)と続けようとした言葉を紅太郎の静かだが響く制止の声で黙らされた。
「驚かせてごめんね。でも・・・駄目なんだ。確かに魔王には勇者と戦う責務がある。・・・しかし、魔王としての務めはそれだけじゃないんだ。」
「どういうことですか?」
魔界の神である”ニュクス”には、”勇者を倒す”それこそが魔王の使命だと言われていた・・・なのに、
「・・・・君には、移動してから説明しようとおもっていたんだけどね。 僕たち魔王には、支配管理する土地がそれぞれ分け与えられているんだ。
その土地とそこに暮らす魔族を侵略してくる人間たちから守る事も、また、この世界に定められた魔王の義務なんだ。
そして、それは・・・”花の魔王”君も例外じゃない。」
「・・・・・・・・。」
「それに、勇者を殺したいのは君だけじゃないんだよ?」
「え?」
「俺達だって勇者召喚に巻き込まれて魔王になったって口だぜ。復讐したい奴がいるとは思わねぇか?」
「あ!・・・で、でも 皆さんは不老で・・・。」
確かに、自分も楓やあの国の人間達に復讐するのが目的だった。しかし、不老で、おそらくかなりの年月を魔王として生きた彼らの仇が勇者でも、さすがに・・・
「言い忘れていたんだがね、勇者もまた、不老なんだよ。」
「そ、そんな・・・それじゃぁ・・・皆さんの仇は・・・。」
「あぁ・・・今もあの世界のあの国の中で生きている。」
「デモ・・・イマ・・・ムリ・・・デモ」
「あぁ、あと何百年、何千年と時間がかかろうが関係ねぇ~。俺は必ずこの手で、アイツをぶっ殺す。」
錬成の魔王である剛毅さんの言葉に他の二人の魔王も同意するように頷く。
(・・・・・そうか、この人達もけっして復讐を諦めた訳じゃないんだ。)
彼らの心の奥底の一部を知れたような気がした私は、今からでもアイツ等を血祭りにあげたいという気持ちを抑え、とりあえずは、復讐の事は心の方隅に置き、今は、魔王としてこれからの生き方を教わる事にした。
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