百鬼 眠れぬ浪漫飛行
飛んだ
学校の最上階
鍵のかかった屋上への出口
勢いよく蹴り飛ばし
人が登らないようにかえしのついた柵によじ登り
無理矢理飛んだ
それは私が小さい頃から憧れを抱いていた
仮面をつけたヒーローみたいだった
そんな昔の記憶を呼び覚まし
天を刺す大きな声で
仮面のヒーローの技名を叫ぶ
その時の私は
この世で一番の幸福を手に入れた気がした
何者にも囚われないで
どんなルールからも逸脱していた
飛んだ私は
そのまま天に昇るわけもなく
重力に従って
落ちていったわけでした
三階建ての校舎の屋上から
真っ逆さまに落ちた
鈍い音が聞こえて
私は眠くなってしまった
私はヒーローなのだから
早く起きないといけないのに
どうしようもなく眠くて
どうすることもできなかった
遠くから聞き覚えのある声がする
すすり泣く母の声
あんなに文句ばかり言っていたのに
それと聞き覚えのない声がする
やけにはっきりと馬鹿にされている
「目覚めよ飛蝗者」