再会理由
先生との待ち合わせ時間は午後3時、場所は、僕達の仕事場だった。
翌日、その10分前に僕は預かっていた合鍵で入室し、先生の到着を待っていた。
実のところ、まだ半信半疑だった。待ち合わせ場所についてもメールで一方的に指示を受けただけで、まだ、明智先生の肉声を聞いていなかったから。
そして、3時ちょうどとなった時、インターホンが鳴った。
モニター越しに確認した人物が着ていたのは、見覚えのある服だった。
玄関に向かい、扉を開け、来訪者と対面した。
間違いない‥‥。少し頬がこけ、無精髭を生やしていたが、其処に立っていたのは明智先生だった。
「久しぶりだね。関君。」
「先生‥、おかえりなさい。」
その表情を見て、生の声を聞いて、間違いなく先生が戻って来たのだと実感した。
奥の作業部屋に移動し、僕達はソファに腰を下ろした。予め買っておいた缶コーヒーを先生に差し出すと「サンキュー。悪いな。」と言って軽く笑顔を見せた。
その表情からは、特段、精神を病んでいる様子は感じられず、僕はちょっと安心した。
「でも、一年以上も何で連絡くれなかったんですか。酷いですよ。」
安心した事で、逆に湧き上がってきた不満と疑問を、僕は抑える事が出来なかった。
「おいおい、関君何言ってるのさ。それを言うならお互い様だろ。」
先生は、あからさまに不満げな顔をして見せた。
「確かに前の携帯を処分し、メールアドレスも電話番号も変えた事は言ってなかったけど、新しいアドレスが書いてあるメモを渡したのに放置されるとは、こっちだって予想しなかったよ。」
正直、これには返す言葉がない。
だが、この後の先生の発言はスルー出来るものではなかった。
「もっとも、普通に新しいアドレスにメールが来ても、返信するつもりはなかったんだけどね。」
再び、僕は問いかけた。
「何でですか。」
先生は苦笑いをして見せた。
「でも、実際こうして返信メールくれたじゃないですか。どういう事ですか?」
「まあまあ。」
先生は、少し気持ちが高揚していた僕を、右手を挙げて宥めた。そして、ポツリと言った。
「‥‥君の回答さ。」
一瞬、意味が解らなかった。
「僕の宿題に対する君の回答が、僕が想定した合格ラインを遥かに超えて来たからだよ。‥だから、君に会おうと思ったんだよ。」
やっぱり、意味が解らなかった。
「関君、実は僕は今日、君に頼みたい事があってここに来たんだ。」
明智先生の発言の主旨が全く解らず、僕は呆気に取られ、言葉を失っていた。
「ごめん、そうだな。まず君には、僕のこれまでと、ここに至った経緯をちゃんと話さなければいけないよな。それが筋ってもんだし、そうでなければ、頼み事をする相手に対して失礼ってもんだ。」
そして、先生の自白が始まった。




