任意(?)聴取
その後、不規則な混雑と閑散を何回か繰り返し、気づくと、時計の針は午後3時を指していた。
通常のパターンだと、これから5時までは来店客は少なくなる傾向だった。
案の定、客足は途絶えて来た。
「それで、明智先生とは連絡取ったの?」
思い出したかのように、石川優美が聞いてきた。
「それが、実は連絡が取れなくって‥‥ちょっと困ってるんだ。電話しても、毎回留守番電話だし、メールしても返信がないし‥」
僕が明智先生の元で再び働きたいという希望を持っている事を、彼女は何となく感じ取っているようだった。
それに、先程の件もあって、僕は正直に答えた。
途端に、彼女の中のスイッチが入った‥‥気がした。
「何それ、それじゃあ、ラチがあかないじゃない。」
「まぁ、そうなんだけど‥」
そこからの石川優美は、探偵(?)というより刑事のようだった。
僕に対するソレは、さながら事情聴取‥
「『そうなんだけど』って‥‥。そもそも、休みに入る前、最後の日とかに先生から何か言われてないの?」
「特には‥」
「じゃあ、何か渡されてたりしないの?」
「渡されたもの‥‥、あるにはあるけど。」
「あるの?何よ?」
「臨時ボーナス、或いは餞別だったのかもしれないけど‥‥、お金だよ。」
「そのお金は何かに入ってたんじゃないの?」
「そりゃ、封筒に‥」
「その封筒の中は、ちゃんと見たの?」
「‥‥。」
「見てないの?」
「いや、だって‥その辺の銀行の現金封筒だよ。」
「見てないのね。」
「‥‥うん。」
パワーバランスは優美さん9、僕が1位になってた気がする‥。任意聴取と言えるようなものではなかった。
「その現金封筒、どこにあるの。」
「そのまま、お守り代わりに鞄の内ポケットに入れてあるけど‥。」
「今、持っておいで!」
最後は命令(?)になっていた。
実際、僕はその封筒を開けた事がなかった。
中身がいくらなのかは関係なく、その全てを先生の再スタート祝の宴の軍資金に使おうと思っていたから。
でも、そんな僕の気持など、石川優美が知る由もない。
「大体、人様にお金を貰って‥その金額も確認しないなんて、非常識よ。」
手厳しい‥が、正論だった。
「さあ、開けてみて。」
促され、僕は封筒を開けた。
指先を差し入れ、中身を取り出した。
姿を現したのは。複数枚の1万円札‥‥。
数えてみる‥
その途中‥7枚目と8枚目の間‥白いメモ紙が滑り落ちた。
それを拾い上げた石川優美‥のドヤ顔‥。
結局お札は全部で10万円あった。
そして、メモ紙に書いてあったのは‥‥先生から僕への宿題(?)、と初めて見るメールアドレスだった




