考察者の名前
「ただね‥‥」
石川優美は、再び自らのパトロール成果について報告を始めた。
「この考察サイトについては、まだ続きがあるのよ。」
実は、この時点で既に、僕にはある種の予感めいたものがあった。‥‥それは悪い予感に他ならなかった。
「普通、こういうサイトを開く時って、いわゆるハンドルネームを使用するのが一般的なんだけど‥、この人は本名を使っていたみたいなの。」
「何かの意図があったのか、不慣れだったのかは判らないんだけど‥‥。」
「本名を晒すって事にはリクスが伴うって、誰でも考えると思うんだけどね‥‥」
「もしかして‥」
石川優美は僕の顔をじっと見て‥‥、コクリと頷いた。
「この人は、その3ヶ月後に殺されたのよ。」
(やっぱり‥)
予感は当たった。
「因みに、この殺されちゃった考察者の名前なんだけど‥‥」
『‥犬飼以蔵。』
その名を先に口にしたのは、僕だった。
「えー、なんで知ってるの?」
「なんで?なんで?」
石川優美は驚いていた。
「以前、ニュースで見たのを思い出したんだよ。」
僕はそう答えた。
‥が、それは嘘だった。
『犬飼以蔵』‥‥。それは殺人を犯してしまった高杉さんが殺した相手の名前だった。
最後に僕が先に答えてしまった事が気に入らなかったのだろう。石川優美は不機嫌になっていた。
「サイト主が死んじゃったから、そのサイトは当然閉鎖されててね‥。情報集めとか、その考察の原文を入手するのとか‥、大変だったんだからね。」
(僕が頼んだ訳じゃないんだけど‥)
「たった一週間でこの成果‥。凄くない?」
「もしかして、私って探偵になれるかも。」
(ずっとネットで検索していただけで、それは探偵さんに失礼じゃない?)
「いや〜、でも、さすが優美さん。」
「優美さんのお陰で、色々と腑に落ちた。ホント、助かったよ。ありがとう!」
思った事のうち、彼女受けするであろう部分だけを切り取って、僕は石川優美に感謝の気持ちを伝えた。
「まぁね〜、出来る先輩は辛いって事よ。」
取り敢えず、優美先輩の機嫌は戻ったようだった。




