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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
10.望まれざる再会
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76.翼蔽

少し前に遡ります。

奈波視点に戻ります。

 私は、魔法を組み立てようとして、はたと考える。何をしよう、と。

 それでルルーとの戦いを眺めていた。彼女は初めは様々な属性の魔法を使っていた。しかし、途中から、二人の戦い方が固まったようだった。徹が火を使い、ルルーが水を使う。

 その辺りで魔法陣数学の計算をしなければならなかった。しかし、ルルーと徹の、まるで予め申し合わせたような、息の合った剣筋に、つい見いってしまっていたのである。


 待った、剣?!

 そんなものがあるとは初耳だ!

 しかも二人とも使うとは!


 いやいや、今はそんな場合でない。

 ルルーの壁で安心しすぎていた。


 水魔法。水、水……相手は火魔法。相手は強い。願わくは、それを利用したい。ではどうすれば?

 ふと、魔法陣数学を初めて学んだときのことを思い出した。


 水と、火?

 そうだ!


 しかし下手をすれば、逆に相手に利用されるだろう。さあどうしようか。


 あぁやって、こうして……と、頭でシナリオを考え、計算を始めた……


 ……どのくらい、時間が経っただろうか。

 ふと、気配を感じて顔を上げる。

 十メートルほどの距離のところに、徹がいた。

 少し横を見る。

 ルルーは、何匹もの魔物と孤軍奮闘していた。

 無駄のない剣筋――のように見えるが経験者でない私には分からない――で、一気に倒してゆく。しかし、それでも数が多すぎる。

 ゆっくりと、徹は近づいてきていた。その歩調は、故意の戦略か、はたまた余裕か?

 途中、透明な壁にぶつかる。それで少し安心して、私はまた計算を始める。

 しかし彼は、その壁に手を当てた。呪文の詠唱を始めた。


 これが壊されたらまずい。

 すぐに防御魔法を使おうとする。しかし、そうしてしまうと、計算をどこまでやったか分からなくなり、また振り出しに戻るのだ。そうなれば、逆に危険が高まる。

 私はもはや、何をどうすべきか分からない。

 ただ目を見開いて、前を見ることしか出来ない。


 終わった。


 そう、思った。



「ぐっ! 何だ!?」

 時間が止まらんばかりに長く感じた、数秒の沈黙が、徹の声で破られる。

 二人、徹の背後を見る。


 ルルーだ。


「ななみ! 安心して……気にしないで続けて!!」

 ルルーが、顔を紅潮させながらも、笑顔で、私に叫ぶ。

 彼女は、後ろから魔法で彼を攻撃したらしい。

 そのまま剣でもって、壁から彼を引き離そうとする。

 彼が雷魔法でルルーが剣を持つ手を狙う。それが当たってしまい剣を手放した。しかしすぐに別の手で魔法を繰り出した。風魔法で、徹を吹き飛ばしたのだ。


 何度も何度も、徹は私の方に来た。そのたびに、ルルーは突き返した。ペンを再び剣の姿に変え、さらに何度も徹を退けた。不意打ちのためか迂回をしても、ルルーにそれが通じることはなかった。


 護られているのだから、それに応えなければ。


 計算する。

 何度も見直し、ミスがないか確認する。


 そして。

「ルルー! 完成した!」

 壁越しに、彼女に耳打ちした。

 壁を解除すると共に、魔法を作動させる。


 果たして、うまくいくだろうか。

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