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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
10.望まれざる再会
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71.開戦

「災いの芽は早いうちに摘みたいものだ」


 そう言って、彼は口を閉じた。

 私は、黙って聞いている。


 一つ、また一つ、伯父のことを知っていく。今まで何も知らなかった彼のことを。それは、私にとっては恐ろしかった。


 それは、彼の傷つけられたプライドの代償なのかもしれない。彼の言葉を信じれば、裏切られ、全て奪われた彼の気持ちはわからなくもない。しかし、ここまで冷徹になれるものなのか。


 ふと、ルルーを見やる。

 怒りに顔を紅潮させ、目に涙を溜め、何か呟いている。それにより、魔法の効果は止まっていた。


「……黒魔術師を何だと思っているのよ……?! そんな事には使えないようになってるのに、あの人は勝手に疑って、黒魔法の誇りまで傷つけているのに……何で自分ばかりを守ろうとするの……?」


 聞こえてしまった。

 全てが伯父の勘違いだったのか。

 伯父への同情が崩れ始める。

 しかし、彼にルルーの言葉が届くことはなかった。


「魔法封じも、終わったようだね。そこの黒魔術師は強いようだ。私は、黒魔法は不得手だが……」

 伯父は――いや、徹は、その手の中に、黒っぽいものを作った。それは、ビー玉くらいの大きさで、あの魔物が持つ靄を、もっと黒く、もっと濃く、集めたみたいだった。その黒は、やがて、いかなる闇夜よりも、深い、深い陰のように見えた。

「大きな光の球を作ってあれに当てて! なるべく強いの! 早く!」

 ルルーが慌てるように私に耳打ちした。何も考えず従えば、その闇は、ガラスの弾けるような音を立てて壊れた。黒い煙が漂う。飛び散った漆黒の破片は、周りの光を吸い込んでいるように見えた。

「その子はやはりすぐ分かったようだね。今のは黒魔法の象徴さ」

「闇の球……されど、大きいものは、流石に作れないようですねぇ」

 久々に見た、ルルーの挑発的な態度。

 彼女は両手を広げ、向かい合わせに構えた。手と手に挟まれた空間に、意識を集中させ始める。

 その途端。

 一気に、さっきのような黒い靄が、手のなかに広がったのだ。

 それは、みるみる膨らんでいく。育つように。生きているように。バスケットボールくらいの大きさになっても、まだ、勢いよく深淵が広がってゆく。

 両腕にいっぱいになったとき、彼女は素早くそれを投げ飛ばした。

 対象は、対峙している相手。言うまでもなく、徹だ。真っ黒な雲は、一直線に彼へと向かったのだ。

「えっ……うっ!」

 見事に、命中する。


 黒い煙の中から、徹が立ち上がるのが見えた。

「くっ……ははっ。まさか不意打ちで倒せるなどと、思っていないだろうね」

 初めは、呆然としていたかに見えた。不意打ちにあったというような。しかしその顔は、次第に、せせら笑うような、怒りを宿すようなそれに変わる。

「大きいが、雲のようにおぼつかない球だ」

 声が、活気を取り戻していた。今までより冷たい声音だった。

「それくらい分かっています。全て計算の上ですよ」

 ルルーの目もまた、皮肉を宿していた。

 徹は、顔から笑みを消した。

「……私は、そこの子に攻撃した覚えはない。しかし彼女は攻撃した。ならば反撃はしても良いというわけだ」

「一体何をおっしゃっているのですか? 私の親友を傷つけておいて」

 その平然とした口調にか、はたまたその言葉にか、彼は苛立った顔をした。しかし、彼女の言葉を無視するように、言葉を繋ぐ。

「今、私は君たちの実力を知った。まさか、これで終わりだとは言わないし、言わせないよ」

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