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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
2.始まりと失敗と出逢いと
7/102

6.失敗

 また、いつも通りの日々。

 朝起きて、ご飯食べて支度して、電車に乗って、単語帳見ながら空席探して、校門をくぐって、教室に入って、自分の席に着いて。――そういや、朝食の時、母が私の顔を見て、ニヤニヤしてたっけ。

 魔法が初めて使えた時の、あの高揚感、あのなんとも言えない気持ちを返せ。

 魔法が使えたって、何にもかわらないじゃないか。


 あの日、寝るまでの間に、風魔法に磨きがかかった。コントロールの仕方も書いていたので、自由に竜巻を作ってそれを動かせるまでになったのだ。

 しかし、それが何になる。

 あの後、何度も魔道書を読んだから、例の言語を、かなり早く、多く読めるようになった。

 けれど、国語の長文読解が、早くなったわけじゃない。

 電車の中で英単語カードを繰っても、前より覚えが良くなったわけでもない。

 何にも、変わりはしない。いつも通りの日常だ。

 いつも通り、陽キャがクラスで騒ぎ、それ以外は受験勉強と言う名のクイズに励む。

 私は、席にじっと座っている。


 昨日の復習とばかり、緩い風を、ホームルームで起こしてみる。

「あ、涼しい」

「クーラー入ったかな?」

「いや、この教室エアコンないから。扇風機じゃね」

「動いてねぇじゃん」

「まあいいや。涼しいから」

 前言撤回。やっぱり嬉しい。別に、自分が注目されなくていい。でも、私が、私自身が繰り出した魔法で他の誰かが動くというのが、なんとなく面白いのだ。

 今までの私とは、違う。


 こんな些細な事でガッツポーズをするとは、なんて馬鹿なのだろう。

 いまやっている魔法は、自分の手の形に左右されるのに。


 拳を作った瞬間、風は竜巻に変わった。

 手を前へ出した瞬間、竜巻はものすごい勢いで移動した。


 急いで指を解いた時は、もう遅かった。

 教室に、大音声が響く。


「え、何あれ?」

「誰も居ないよね……」

「カーテンが当たったんじゃない?」

「窓、開いてないし」

「えー、こわ」


 窓際の花瓶が倒れ、粉々になっていた。

 水が広がり、差していた桜の枝は、一部が折れ、周りにピンクの斑点が見えた。


 取り返しのつかない事をした。そう思った。

 こういう事もあるし、クラスが注目してなくて良かったー

 ……いや、本当に、良かったのか?

 そういや、昔、誰かに濡れ衣着せられたなぁ。仕返す?

 そうも思ったが、とても、実行に移せない。

 どうして?魔法を忌み嫌っていたの、そいつのせいでもあるでしょ?

 そんな事言ったって、やったのは自分じゃないか。


 教室が、ざわざわしている。

 いや、教室だけではなさそうだ。

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