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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
9.分かれ道で揺られて
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63.欲望

 ホームルームに戻った。

 誰よりも早く、ドアに手をかける。そりゃそうだろう。ほかのクラスメイトのように、友達と喋りながら帰るわけでもないから。ルルーは……あれ? 見かけなかったな、朝は確かに居たのに。

 まして、日直だから、教室の鍵を開けねばならないのだ。面倒くさい。

 カタカタ、と音を立てながら、ドアは動くのを拒む。

 もしかして開いているかも、と一抹の希望を持って教室に直行したのに、鍵を取りに職員室まで行くことになった。何という二度手間だろう。


 そう、思っていた。


 きびすを返した瞬間、ドアからガチャリ、という音を聞く。

 ハッと振り向く。

「……えっ!」

「あ、ななみだ、よかったー」

「……いや、よかった、じゃなくて!」

「いやー、他の人だったら色々と面倒だろうから、さ」

「……え、待って。どうやって入ったの、てかいつから?」

「えーっと、点呼が終わった瞬間こっち来た」

「……へ?」

「まず、魔法で私の座ってる姿の幻影出して、それにカモフラージュしてもらって教室の中に転移魔法」

「……」

「で、これやってた」

 手には、理科の問題集。生物の一問一答……のようだ。

「……え、何で?」

「あんなとこでじっとしてる時間があったら勉強したいし。自分で学び取る人に、とか学生になれ、とか言ってたでしょ、どうせ?」

「……いや、何で知ってるの」

「ここまで響いてたよ。校長のマイクの音でかいし。……自分で学んで、大学行くために計画して、これやってんだから……だれも、咎めないよね」

「……やってること自体は咎めないとしてもさ……一応、この教室はしっかり施錠してたんだよ? 他の誰かが見たら怪しむんじゃ……?」

「だから、他の人だと面倒なの。まあ、記憶変える魔法出すつもりだったけど」

 うーん、ルルーが仮に盗人になったりしたら、厄介だろうな。まあ、彼女に限ってそれはないだろうが。でも、だとしても……

「……今、私が怖いって思った?」

「……!」

 駄目だ、しっかり表に出ていたらしい。

「……黒魔法って、犯罪に悪用とかしやすいんだよね。幻影とか記憶改変とか、他の人の動きを意のままに操れたりとか」

「……」

「でも、だからこそ、黒魔法は使用者が悪い欲を出したら使用不可能になるようになってるんだ。白はそういうのないらしいけど……」

「え、じゃあさ、魔法リセット? のって……」

「あぁ、忘却魔法のこと? あれの方が、こう、なんていうか……幅広く、使えるかな。黒魔法を止めるのは、悪い『欲』だけだからね。憎悪とかそういうのは対象外」

「なるほど」

「まあ……これってどうなんだろ。勉強したいっていうのも、ある種の『欲』だと思うんだけど……」

「悪欲じゃないからいいんじゃない?」

「ま、そっか!」

 そうこう話していると、他のクラスメイトがワイワイしながら帰ってくる。

「あ、開いてんじゃん!」

「ラッキー!」

「え、でも鍵無くね?」

 あ、しまった。

 すると、ルルーが、目の前から消えた。

 と思えば次の瞬間、また目の前に現れる。

「ここだよー!」

 みんな一斉にルルーを見る。

 右手には教室の鍵。

 ……どうなっているの?

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