60.復習
魔法陣を破り、魔法を止めた。ずっと待っていたが変化が無かったからだ。
章末問題の文で求められていた魔法をよくよく読めば、その蛇は一分ほどでフェードアウトするはずだったのである。
魔法陣を、もう一度よく確認する……が、複雑で分かりづらい。
答えを見てみた。すると、確かに、魔法の最後の動きを指定する部分が異なっていた。
しかし、初めにしてはかなりうまくいったと思う。
二問目を見る。
さっきの失敗を踏まえ、魔法の終わりの模様に気を配ろう……いや、その前に、もう一度そのページを見たほうがいいかな? いや、それよりさっきの問題の計算を見返すのが先か。
「あっ、これ……か」
普通に計算ミスだった。魔法陣特有の計算、というわけでもなく。
理解が足りなかったのならまだしも、それで結果が変わるのは悔しいかも。
そこで、はるか前、魔法に目覚めて間もない頃に聞いた話を思い出す。
――流れ星みたいな光を作る魔法の呪文と、人ひとり傷つけるくらいの雷を起こす魔法の呪文は、ほんの少ししか変わらないんだって。
「……ひぇっ……」
肝に銘じる。もうミスはしない。
というか……これでは、練習を極めないと、この間のような戦いで使うのは危ないかな。
しかし、もし使えたら、使える魔法のレパートリーがぐっと増えるだろう。
ならば、道は一つ。
ひたすら練習する。
第二問を見る。
もう一度、計算を繰り返した。
出来上がった魔法陣。
やはり、今までより線が重なって、緻密な感じだ。
魔法を発動させると、魔法陣が光り、目の前に水の壁が出来た。
ここまでは今まで通り。しかし。
その壁は、円形に動き出し、円筒のような空間を作る。
その水の壁には流れがあったが、ある瞬間、突然止まる。
時間が止まるように。
触ってみれば、冷たかった。凍りついたのだ。
ストップウォッチで十秒測る。
数秒の誤差はあったものの、氷はおよそ十秒で砕けはじめ、突如現れた火の玉によって液化し、蒸発した。
「……あっ、これって……!」
もう一度、問題文を見直す。まさに、問われているものそのものの動きをしたのだ。
解答をみれば、まさに、私が描いたものと同じだった。
自然と、ガッツポーズをしてしまった。この感覚は……学校の問題集を解いていた時も、感じたかも。でも、その時より強い、達成感と呼ばれる感情だった。
従来のやり方では、壁や玉といったものに、自由には動きがつけられなかったのである。
魔法陣の仕組みがわかればわかるほど、自由度が増すという事だ。
ふと、昔、祖母が見せてくれた魔法を思い出す。
いつかは……いつかは、あんな風な、人を魅了する魔法を、繰り出せるようになりたい。
いつになるかはわからないけれど。




