57.戦術
「すごいっ! ななみ、おめでとう!」
「ありがとう!」
ルルーが近寄り、祝ってくれた。記念すべき、初討伐である。それは初めてにしては強かったが、強い方が、得るものは多かったかもしれない。だいぶてんやわんやだったし、グダグダだったからだいぶ助けてもらったが。
「ねえ、最後のって何なの?!」
「あぁ、あのぬかるみの?」
「うん!」
「あれはね……」
土壌の液状化現象。
地面が揺れれば、土の粒子同士がぶつかり合う。すると、土は下へ、土壌の内部に含まれる水分が上へと動く。地震が起こった地域で、地盤沈下が起こったり道路が水浸しになったりするそうだが、その原因はこれだという。埋立地など、水分の多い砂地ではきわめて起こりやすい。森林は木が多いため起こりにくいそうだが、もしかしてと思ってやってみた。魔法によって作られる震動だが、だからこそ成功したのかもしれない。
私の、年に合わないほど得意げな説明を聞いたルルーは、少し目を丸くした。そして、ややあって、一人で呟くように言った。
「そっか……科学的なのを使った戦術もいいね……」
この後、二人でもう少し弱い魔物の討伐をしていった。何匹も、何匹も。
少しずつ、相手の得意な魔法の属性を見てその弱点に合わせた攻撃を考えられるようになってきた。まあ、自分で考えているのか、ルルーが教えてくれたからわかったのか曖昧だが。
相手が雷なら植物と土。
植物には火。
土には水や風。
火には水。
水には風。ただし氷を出してきたら火。しかし氷が溶けると火が弱まる。
風には火。これは、相手が火に弱いからというよりは、風が火を強めるから。その分制御が難しくなるが。土は、壁に限っては風に対してある程度有効だという。
光はほとんどの属性に有効だが、少し弱いらしい。まあ、困ったらこれを出せばいいか。時間稼ぎになりそう。
「魔物は黒魔法を使えたりするし、もしそいつがレベル高かったら『闇魔法』なんてのも出してくるけどね」
「えっと……なにそれ?」
「黒魔法特有の属性。光は白魔法特有だし、そんな感じ」
「ふうん……で、相手が闇? 出してきたらどうするの?」
「光魔法は闇より強くて、闇魔法は光より強い」
「矛盾じゃん、それ」
「だから、属性だけで言ったらおんなじくらい強いから、こればかりは熟練度で差がつくんだよね、対人戦とかなら特に」
「対人戦とかあんの?!」
「まー……ね。魔物はまあ、闇魔法使えたとしても雑魚だし」
「おぉ……ていうか、何で魔物は黒魔法使えるの?」
「あー、それは、なんか私らの祖先が、魔物討伐を生業? にしていて、魔物の使う魔法が人間のと違うなーってなって、そいつらの使う魔法ちゃんと知ったら便利かなーって言って、それで研究して人も使えるようになって黒魔法が生まれたらしいから……」
「えっ、じゃあ魔物が先なのか!」
「らしいよ……何であんなのを参考にしたんだか」
そんなこんなで、社に着いた。
あぁ、またあの面白い神と話すのかな。




