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49.手本

「というか、どうやるのが正解なの、これ?!」

 横の祖母に、助けを求める。

「うーん……一回やってみるわ。久々だから出来るかわからないけど……」

 自分の杖をポケットから取り出し、私のと同じように、ホウキに変える。私のホウキより、ひとまわり大きい。それに、またがって、慣れた手つきでスッと離陸する。

 そこで一回くるりと旋回。そして、目標の木に近づく。近づきながら、呪文を唱え始める。


 私も、だいぶ練習して、スムーズに唱えたつもりだった。しかし、祖母のとは何かが違う。どこがか、はっきりとはわからない。だけど……滑らかで、淀みなくて、緩急があって。私のとは全然違って。


 木にある程度近づく時には、詠唱が終わっていた。ピシュ、と、一筋の水の矢が放たれた。枯れて茶色くなった木の葉が、掠められて、シャララと音を立てて数枚砕け落ちる。

「おお〜!」

 そして、彼女はまた、くるりとその場で回る。トンッと、地に足を着いた。


「旋回は一回で良いわね。浮かび上がった直後とか、着地の直前とかは、バランス整えるためにやったらいいけど」

「あー、回りながら呪文言うんじゃなくて、呪文言ってる間は直進した方がいい感じか」

「それと、さっき空中で止まってやろうとしてたけど、あれは難しいわよ」

「へえ、そうなのか」

「気流が安定してないと、ぐらつくしねぇ」

「なるほど」


 もう一度、祖母が飛び立った。ある程度の高さで再び旋回、背筋を伸ばす。十数秒ほど、空中で静止して、少し苦い顔をしてまた回り、着地した。

「うーん、やっぱ難しいわ」

「そうなんだ」

「あ、奈波は出来るかもしれないけどね!」

「……いつの話だろうね?」


 もう一度、離陸してみる。ある程度上昇し、一回転……しようとしたところで、風が吹いた。

「ひゃわっ!」

 落ちそうになった。

 初めてあげたかもしれない、こんな悲鳴。でも、初めてホウキを使ったのが今日で、室内ではだいぶ上手くなっていたが、外で飛ぶのなんてまだ二回めだ。初めての事が余分にもう一つあったって不自然ではない。それにしても、風の存在は忘れていた。よく考えれば、季節的には吹いているのが自然か。一回目の時はたまたま止んでいたのだろう。

「慣れたら結構強い風吹いても大丈夫になるわよ。こればっかりは経験の積み重ねしかないわね」

「うーん……頑張るわ」

 気を取り直してもう一回。今度こそ。

 もしかすると、光魔法の方が言いやすいかな。多分、呪文の特訓の時も、そうだったから。

 飛び立って、くるり、すうっと前進、目を閉じて、集中して、呪文を唱え始め……そして、目を開けた時、木がすぐそこに迫っていた。


 ぶつかる!! とっさに顔を背けた。


 しかし、顔に当たったのは、鋭い枝ではない。

 もっと、そんなに脆くなくて、あまり硬くなくて、平たいもの。


 あれ? と思うが、ホウキはずっと前進し続けようとするので、近すぎて見えない。ああ、仕掛けを動かせばいいんだ、と気付いて、後退した。


 そこにあったのは、光の壁。呪文は、しっかりと、形になっていたのである。

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