48.平衡
ホウキで自在に飛べるようになった!
こうなってしまえば、いかにも魔法使いといった感じだ。小さい子供は、いやそうでなくとも、誰もが一度は物語で読んだことのあるはずの、「空飛ぶホウキ」。それを今、使っているのだ。すっかり浮かれて、誰に報告しようか、と思っていた時、ちょうどいいタイミングで祖母が遊びに来た。
すいっと、階段を降りる、というより階段に沿って空中を滑る。
「あら、この間の景……」言いかけて口をつぐむ。母が居たからだ。
「この間あげたホウキ、使ってくれてるのね」
「これ、おばあちゃんがくれたの?」 母が尋ねる。
「ええ、たくさん貰ったから、一本、奈波に分けたのよ」
「そうなんだ! 奈波、お礼言った?」
「もっ、もちろん!」
「おばあちゃん、ありがとうね〜」
母に魔女集会のことを言わないのは、母に隠し事をするということ。だから心苦しさはあったが、言うとめんどくさくなる、という思考を、いつもクラスメートに対ししているのと同じように、してしまう。しかし、祖母の言葉に、はぐらかしはあるが嘘はない。だからその後ろめたさも薄らいだ。
「飛べるようになったなら、飛びながら魔法使う練習してみる?」
「……えっ?」
祖母の言葉に、耳を疑う。今、飛びながら魔法使うって?
「これは、ほんとに出来る人は出来るし、出来ない人は出来ないのよね……奈波は大丈夫よ! あんなに上達速かったもの!」
「……ちなみに、おばあちゃんは出来たの?」
「ああ、よくやってたわよ。出来るようになれば便利なのよね」
「まじか!」
そんな器用なこと、出来るだろうか? 舵を取りながら、呪文なり魔法陣なり使うということだ。考えるだけで、頭がこんがらがる気しかしない。
「まあ、ものは試しよ! やってみなきゃわかんないじゃない!」
そう言われたので、やってみることにする。
練習場所は、以前も祖母との特訓で使った空き地。だが、あの時とは違い、冷気が私の体を刺すようだ。自然と体が震える。
「片手を離すとバランスが悪くなるから、先に呪文やってみましょう」
「わかった」
呪文の唱え方は、もうマスターしているはずだ。夏休みに祖母と練習した。冬休みに魔女集会で教わった。息継ぎを含む呼吸法、イメージしながら意識を集中させて、力を込めて、唱える。それが、ひとつひとつ考えなくても出来るようになった。
しかし、揺れるホウキの上で、片手で仕掛けを動かして舵を取りながらでは、わけが違う。
まず、ホウキにまたがる。舵を、ゆっくり、ゆっくりと上に上げる。すると、体がすうっと浮かび上がる。練習なので、一メートルくらい上がったところで、水平に旋回を始める。
そこで、水の矢を繰り出す呪文を唱え始めた。木をまっすぐ見て、そこに撃てるように。うん、いい感じかもしれない。今までと、感覚は違わない。
しかし。
「えっ、あ、待って」
自分が旋回しながら詠唱していたことを忘れていた。木から離れて行ってしまう。そこで呪文が途切れた。
そこで、空中で静止しようとした。が、バランスが崩れ、落ちそうになる。
一旦着地。うーん、難しいな……




