43.仲間
会場に入る。
人が多いのか少ないのか、相場がわからない。ただ予想より多いのは確かだ。いや、一般向けのイベントに比べれば少ないか。……ちゃんと数えてみれば少ない。部屋が狭いから多く見えたのだろう。
受付を済ませれば、プログラムが渡される。結構充実している。これだと長くかかるのではないか、と思い、無意識にスマホの時計を見ると、だいたい正午くらいだった。
開会式。祖母がスピーチを始める。いつもと違う、凛とした声。というか、うちの家系が結構凄い(凄かった)という話は何度か聞いたが、まさか身内がこういう人たちの前に立って話すほどだとは。しかも、ルルーいわく、いつもここでスピーチしているという。そのためか、話術が上手い。普段の「あらー、ななみ、大きくなったわねぇ!」ばかり言う祖母とは違う。
ところで、祖母は私が居ることに気づいているのだろうか?
次に、ミニゲームが始まった。ここでも司会進行は祖母。ここで良い成績をとれば、流石に気付くだろう。
競技は年齢層別に三つに分かれている。
それだと、まだ魔法使い歴の浅い私は不利ではないか! と思ったが、チーム戦なのでルルーにたくさん助けてもらうことが出来た。
お陰で、魔法のホウキを手に入れた。渡しに来た祖母と会う。
「あら、ななみじゃない!」
「うん、来たよ。ルルーと一緒に」
「ルルー? ……ああ、瑠璃亜さんね! ななみ、知り合いなの?」
「今年、うちの学校に転校してきたの! いつも仲良くしてもらってるよ」
「……白と黒が手を携え……理想ね!」
「……へ?」
「まあ、伝説書にそう書いてるからね。白魔術師と黒魔術師が仲良くするのは良いこと、って」
「ふーん……そんなら、そもそも白と黒の区別なんてなけりゃ良いのに」
「まあ、それも今日のディスカッションの議題の一つよ」
「へえ〜……」
「まあ、今日は楽しんでいってね。初めての集会だしね」
「うん! というか既に楽しんでるけど」
「そう。なら良かった」
次は、大人は昼食をとりながらの会議である。
それと同時並行で、小さい子供を含めた初心者には魔法の手ほどきが行われる。
私のような高校生は、どちらにいっても良い事になっている。
「まあ、手ほどきなら私がいつでもしてあげられるけどね」
祖母からもルルーからも言われた。それに、小さい子供に交ざるのは恥ずかしい気もする。だが、初心者は初心者ではないか。難しい話はわからないし、そういう場で積極的な発言ができるような性格でもない。トンチンカンな事を言いかねないし……
そう考えれば、初心者コースに行くのが妥当だろう。
ルルーは、発言したい事があるらしく、会議の方へ行った。手には文字の詰まったメモの束。凄いなぁ……
「この後の研究会は本当に楽しいから、期待して!」
「そうなんだ! じゃあ、また後でね!」
指定された部屋に行く。なんだ、結構同年代の子もいるではないか。
それで、見回して、すぐに気づいた。教わる人は数人がグループになるらしいのだ。生徒五人に対し、先生ひとりといったところか。
高校生くらいの人が集まっているところに入れてもらった。
「えっと、君はどの位のレベル?」
先生と思しき人に聞かれる。
「えっ……と、今、中級をやっています」
「やったあ、仲間だ!」
横に居た少年が言った。
「このグループみんな上級やり始めてたから肩身が狭かったんだよなー。何年?」
「高三……になります」
「よっしゃ一緒だ! 頑張ろうな!」
なんと気さくな男子だろう。
どうやら、隣の県から来た、白魔術師の少年らしい。
彼の瞳は、ピンク色をしていた。
このグループには、もう一人男子がいた。他は女子だった。
その少年は、大人しそうで、臆病そうで、銀色の目をしていて。
だが、実際に魔法を繰り出すと、それは誰より上手かった。
私には上手下手は分からないが、「君、初心者じゃないよね?!」と先生に言われるくらいだからそうなのだろう。
「いや、初心者ってわけじゃ無いですけど……向こういっても、言うことないと思うし……」
「えぇ……そういや、去年もそういう子いたなぁ。もっと積極的だと嬉しいんだけど」
「そうですか……僕は今年初めてですが……まあ、指導の補助が出来ればと思って……」
「俺の仕事を奪う気だな?!」
「いや……そういうわけじゃ……」
「だって俺より上手いし!」
「……えぇ……」
先生がぎゃーぎゃー言っている。つまり、それだけ上手いのだ。
大人しそうな見た目に反して、「指導の補助」とか言っているほどには自信家だ。どこか親しみやすく感じて頑張って話しかけ、聞いてみれば、さっきのピンクの目の少年のクラスメートらしい。
つまり同い年。ついでに、同じ白魔術師。レベルは全然違うけれども。
レクチャーが始まる前から、すでに「来てよかった」ってなってる。
だって、早くも新たな仲間に出会えたのだから。




