40.参加
「なんだかよくわからないけど、行ったらいいじゃない。ずっと、魔法の勉強頑張ってるみたいだし」
「えー、興味はあるけど、なんか怖いような……そうだ、ルルーは行くのかな? だったら一緒に行こう」
「ルルー?」
「あ、こないだ言った、転校生の子。魔法使いなんだけど、私なんかよりずっとずっと上手いんだよ!」
「へえー、凄いわねぇ!」
早速、ルルーにメールを打ち始める。なぜかその途中で、ふと疑問に思った。
「……ねえ、お母さん」
「何?」
「お母さんは、魔法、覚えないの?」
「うーん……こんな大人になってから発現させたら、かなり危ないって聞くからねぇ……」
「あー、そっか」
ふっと、自分の魔力が発現した時の、あの気狂いのような耳鳴りを思い出す。こればかりは仕方がない。
では、なぜ、こんな大人になるまで魔法に触れられなかったか。
それは……伯父? そう思った直後、そんな考えが起こった自分に驚く。
まあいい。そんなこと考えるより先に、すべき事はある。
ルルーにメールを送った。さっきの『魔女集会』ってやつのことだ。
『家に魔女集会とかいうものの案内が来ていたんだけど、ルルーは知ってる? 参加しますか?』
何度も文面を見直して送信する。いや、大した事は書いていないけれど。
返事が来たのは夜寝る前だった。そうか、きっとその時間まで勉強しているのだろう。もし忙しかったら一緒には行けないかもな、というか、メールも控えた方が良かったか。
『敬語じゃなくて良いのに(笑) あー、あれね! 昔行かされたかなぁ〜。今年はどうだろ? ななみが行くなら行くよ〜。そんな時間長いわけでもないし!』
びっくりするくらい、文面でも明るさが伝わってくる。ちょっとホッとした。
そのあと何度かやり取りして、どういう集会かわかってきた。
早い話が、年に一回、魔法使いがひと所に集まるのだ。参加は任意。申し込みは不要。「魔女集会」というネーミングだが、それは語呂の良さと伝統によるもので、実際は男性も半分を占めるという。
何をするかというと、魔法の研究、魔法使いの心得や在り方についてのディスカッション、など。ルルーいわく前者の時間が長い。初心者には、難しい魔法の手ほどきもしてくれる。
『白魔術師と黒魔術師が一緒に色んなことするの。それでよく分かんないけどお母さんが黒魔術師代表? って感じで、私が付き添い。中学の時辺りから反発して行かなくなってたけど……懐かしいし、面白いし、今メールもらって、近くでやるんならまた行きたいなって』
手紙の要項を見たら、割と遠い。そりゃあ、地域で細分化してしまったらあまり集まれないだろう。魔法使いがそんなに多くいるわけでもないし。しかし、その場所を告げると、『え、結構近いじゃん!』と返ってきた。
『転移魔法使ったら正味どこでも行けるんだけどね〜(笑) 遠いと魔力いっぱい使うけど、その距離なら何とかなるし! なんならまた迎えに行くよ! お母さんも行くし。今年いつあるの?』
転移魔法……?! なんだか凄そうだ。
そうして、私たちは行くことになった。
大晦日の少し前。……そこで気づく。
『ところで、ルルーは忙しくないの? 勉強とか』
『ああ、大丈夫だいじょーぶ。あの集会、カラクリがあってね、まあ、もし昔と同じなら、だけど』
結構不思議な感じがする。
けれど、ますます楽しみだ。




