表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
6.ルルーの気持ち
38/102

37.羨望

 テストが終わって、返されて。

 そろそろ、インターンシップなんかも始まる時期。

 ようやく、世間でいう「受験生」みたいな緊張感が、うっすらと、このクラスでも漂い始める。

 初めての雰囲気である。

 私も、気を抜けない。


 返された答案を見直し、「テスト復習」と表紙に書いたノートに、間違えた問題を解き直していく。

 多分、これを三年間続けた人は、このクラスには少ないだろう。

 少なくとも、他の子が話しているのを聞いた感じはそうである。

 だが。

 その割に、点が伸びない。


 ルルーは……ルルーはどうして、いきなり受けたテストだったのに、あんな高得点だったのか。

 いや、言うまでもなく、それが彼女の身についていた実力だったのだ。

 だけど。

 魔法もプロ。容姿もいい。女子力も高くて、勉強もできて、気さくだからみんなに好かれて。

 私は……最近は前よりだいぶマシとはいえ、コミュ障だし、勉強も、この学校のテストの点は上の方だが、実際に内容をわかっているかと問われれば、自信が全く無い。

 なぜ、天はルルーに二物を与えたのだろうか。

 そう考えては、ルルーを見やる。

 ==========

 みんな、楽しそうだなぁ。

 最近は、みんなの口から流行モノが出なくなったとはいえ、みんな気楽に見える。


 何で、私は、魔法使いに生まれたの?


 小さい頃、魔法しかやってなくって、他の子のゲームとかの話がわからなかった記憶がある。

 それは、別に良かった。あの頃は、魔法を見せびらかしたって変な目で見られなかったし、それどころか凄いって言われたし、幼いながら、私には魔法があるんだって思えた。

 だけど、その魔法のせいで、唯一魔法の話が通じる友達を失った。


 何で、私は、普通の子として生まれなかったの?


 黒魔法をほぼ全て学んだ今でさえ、たまに思う。

 せめて。せめて、これ以上、大切な人を傷つけることなく、過ごせたら。

 だけど……「普通の」子は、どうしたって、この気持ちはわからないだろうなぁ。

 でも、じゃあ、白魔術師(ななみ)はわかってくれるかな? ふっと思った。

 この気持ちを、果たして、わかってくれるのかな。


 そもそも、何で、魔法なんてものがあるんだろう。

 ==========

 何で、るりあは、竜山さんとこんなに仲が良いのだろう。

 竜山さんは、大人しいというより、私たちと関わりを絶っているみたいに見えていた。

 そんな子とも仲良くなれるくらい、るりあは優しくて、友達想いなのだ、と思っていた。

 けど、いつも竜山さんと一緒に居る気がする。

 こんな大人しい子に先を越されるとは思ってなかった。

 この時期にそんな事を考えたって何にもならない。それはわかっているけれど。

 ==========

「ルルーは良いなあ……みんなに好かれてさ。私だって……ねえー、そのコミュ力分けてよ」

「ええ……そんな事言われても……」

 つい、机に伸びて、でまかせを言って、困惑させてしまった。

「あ、えと、適当に言っちゃった、ごめん」

 ルルーは、しかし、少し考え込む素振りをしてから言う。

「……ねえ……ななみは、『みんなに好かれてる』事は、良い事だと思う?」

「……うーん……良い事、というか、羨ましい。私がそういうのを経験してないし、何とも言えないや」

「表面上の付き合いだけで仲良くなった百人の友達に囲まれるのと、たった一人、理解してくれる友達が居るのと、どっちがいい?」

「えっ……」

 答えに詰まる。

 質問の意図は何?

「どっちがいい……で聞かれたら、後者。前者はめんどくさそう。だけど、前者は未知の世界だから。二回も経験したくないけど、一回は経験したい」

「……あー、なるほどね」

「何でそんな事聞いたの?」

「ああ、その……さっきの言葉で、ふっと思った」

「……」

 自分の答えを思い返して、考える。

 私は一体、ルルーをどういう目で見てたんだろう。

 ==========

「ね、ななみ?」

「何?」

「何で、魔法なんてもの、あるんだろうね」

 ずっと思っていた事を、聞いてみる。

「……急に、どうした? てか、今日はなんかいつもと違うね」

 案の定、困惑された。既にさっき、変な事聞いちゃったからな。

「ん〜……それは、私が数ヶ月前に初めて魔法を学んだ時にも思ったけど……」

「……そうなんだ!」

「けどね……魔法って、実はみんな持ってるんじゃないかな」

「……どういう事?」

 自分の頭の上に、ハテナマークが浮かんでいるのがわかる。

「たまたま、私達のそれが、文字通りの魔力だっただけで……本当は、みんなが、他の誰も出来なくて、他の誰もを魅了するものを持っている……」

「……」

「……的なね! まあ、オープンキャンパスの時思ってさ、実際自分の魔法が他の人を惹きつけられるかって、そんな自信ない、てか、むしろ出来ない自信があるけど!」

 照れ隠しのような笑い顔を、つい見直してしまった。

「それにさ、みんな、自分の趣味とかで他の仲間と繋がったりするじゃん。それと一緒だと思うよ。ルルーが言ってたみたいに、『魔法使い同士の縁』もあるかもね」

「おー、なるほどね!」

 魔法使いでよかった。そう、改めて思えた。

 ==========

 なんで、あのルルーが、こんな質問をしたのだろう。でも、これを機に改めて考える。

 私が魔法使いじゃなくて、ルルーも魔法使いじゃなかったら。

 ルルーの事、何にも知らないで、ただの陽キャという存在だっただろう。

 いや……そうでなくっても、現にルルーの事を全ては知らないけれど。

 でも、『表面上の付き合い』すら皆無の、別世界の人だったと思う。

 言葉を紡ぎながら、改めてそう思った。


 魔法使いでよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ