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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
6.ルルーの気持ち
31/102

30.実力

 相手は、銀色に光るものを私たちにかざした。

 それが、研ぎ澄まされたものであることに気付いた時には、かなり距離を詰められていた。

「黙って、ついてこい。大声を立てたりしたら……」

 荒々しく、しかし声を潜めてそう告げられる。

 彼の仲間が、私たち二人の腕を掴む。


 突然のことに、頭が真っ白だ。


 頭は働かなかったが、口はひとりでに呪文の詠唱を始めていた。

 だんだん力がこもって来た……その時。


「う、うわあ!」

 ルルーを捉えていた男が、悲鳴を上げた。

 意識がそちらに移り、口が止まる。


 彼の腕に、一本の赤い筋があった。

 彼が持っていたはずのナイフが、赤い色をして、地面に転がっている。

 その男は、何が起こったかわからないといった様子だった。


「どうした!」

「小娘! 兄貴に何をした?!」

 ハッとして、ルルーを見る。

 彼女は……無傷。

 口元は、少し得意げだ。


 え?


「指一本、触れていませんが?」

「おい、ただじゃおかねえ……か……ら……」

 もう一人の男は、脅し文句の途中で、ろれつが回らなくなって、

 呆けたように、そのまま動きを止める。


 何が起こっているのだろう。


 最後の一人が、ルルーに詰め寄った時に、私は、一つの発見をする。


 彼女は、真っ直ぐに男を睨みつけるのだが、その時、目がかすかに緑色になる。

 金の目は、エメラルドの目になり、やがてそれは深みを増す。


 最後、閃光が宿る時。


 男の体は、糸が切れた操り人形のごとく、くずおれた。


「あらあら、皆さんどうしたのでしょう? 私は何もしてないですがね」

 そう、得意げに言い放ってから、急に、鋭い目になって私に駆け寄る。

「帰ろ。誰かが来ないうちに」

 いつもの金の目で、光の宿る目で、いつもと違う鋭い口調で。

 気圧されて、私は、曖昧な頷きしか返せない。

 ==========

「もうすっかり暗いねえー」

 帰り道、ルルーは急に明るい調子になって言った。

 結局、学校の周辺を回っていたら、七時になっていた。

 ルルーは目新しそうにはしゃいでいたが、

 私は、上の空になるばかり。


「ねえ、ルルー……さっきのって、魔法?」

「正解っ!」

「それと、なんか、キャラ違った気がするんだけど……」

「そうかな?……まあそうか、魔法使って『戦う』とき、ちょっと上から目線になるかも。」

「ええ……」どういうことだろう。

「ちょうどよかった。ななみ、魔法見たいって言ってたよね?」

「う、うん」

「あれは、だいぶ簡単なやつ。中級から上級ぐらい?」

「次元が違うわ。てか、『機会がない』って言ってたのって……?」

 教室で交わしたメモの文字を、思い起こす。

「ああ、そういや、言ってたね……」

 急に、彼女の顔に陰がさした、ように見えた。

「言わなきゃ、ダメ?」

「あぁ、別にいいよ。興味本位だから」

「じゃあ言わない……あれ、でも、待って。ななみも、魔法使いだよね?」

「そうだけど。」

「ねえ、どんな魔法使ってる?」

「どんなって……まだ初級とか中級しかやってないし。普通の……って言ったら語弊あるか。」

「そっか。光の玉とか、そういうの?」

「うん、そうだね。」

「了解。……じゃあ、言わなきゃ」

 そして、目を閉じ、ふうっと息を吐き、金の瞳を再び開く。

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