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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
6.ルルーの気持ち
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29.転換

 今日は早めに帰ろう。一人で帰っても、まあ、時間帯が早ければ大丈夫だろう。

 そう思っていた時に、隣からの会話が耳に入った。

「るりあ、いっしょに帰ろう!」

「可愛いから余計に、一人は危ないよー」

「ありがとう……でも、うち、親の帰りが遅いから、それまでに帰ったら逆に危なかったりするかもなんだよね……」

「えー、そうなの?」

「でも、遅くなったら余計ヤバくない?」

「まあでも、何とかなるよ! みんな、ありがとね!」

「うーん、そうなのか……」

 みんな、渋々、それでも先生に追い立てられて、帰るしかないみたいだった。

 私も帰ろう、と思った時。


 袖が、いきなり引っ張られるのを感じた。

 そのまま、物陰に連れて行かれる。

 怖くて、振り向くと、知った顔があった。


「ルルー?」

「あの、ななみ? 今の会話、聞いてたりする?」

「聞いてた、けど……」

「よかった、じゃあ話が早いわ。」

 そう言って、もう一度、辺りを見回す。

 私も覗いた。


 生徒は皆、帰るよう促され、校内はひっそりとしている。

 先生が、校内と通学路に分かれて巡回しているようで、

 窓越しに人が見えた。


 校内は、いつもよりずっと、人が少ない。

 大丈夫なのだろうか。


「ふふ、なんだか新鮮だね。」

「そんな事言ってる場合なの?!」

「いーよ、いいよ、不審者が来たらそれはそれで面白いじゃん」

「ええ……」呑気すぎて、返す言葉がない。

「この、誰もいないっていうタイミングに、学校の中見て回りたいなって!」

「……嘘でしょ?」

 そういう冒険心より探究心より、身の安全が先だろう。

「それに、五時まで帰れないし、私。そしたら一人だから、それもやだなって思っていたら、ななみがそこに居たから……」

 ああ、それが一番の理由か。

 よく考えれば、私も私で呑気な事考えていたし、

 校内巡りをするのも、悪くはないだろう。

「うーん、まあ、いいよ」

「やった!」


 自分たちの教室のある棟を上から下まで巡って、

 現在地は一階の階段のふもと。

「いろいろ教室があるんだね……」

「ここらで休憩する?」

「そうするー。と言うか復習! 一回じゃ覚えられないもん!」

「別に、明日に続きをしてもいいんだよ?」

「ああー、まど……えっと、一回で覚えれたら良いのに!!」

「窓?」

「あ、いや……」うろたえるルルー。

 その様子を見て、『まど』が何のことか分かった。

「……魔道書は良いよね。指でなぞったら、一瞬で頭に入るから。」

「えっ?……あ、そっか、ななみは魔法使いだ!」

「そうだよ。何で言い直したの?」

「うーん、他の子に魔法の話をすると、引かれるから……だから、隠すのが癖になってるのかもね……」

 ルルーにも、そんな事があったんだ。

 自分と重ねる。

 しばし、静かな時間が流れた。


 ややあって、隣から声がした。

「えっと、あそこが理科室、あそこが社会科準備室、で、ここが保健室! よし覚えた!」

「じゃ、第二棟行く?」

「うん!」


 出入り口をくぐって、外に出た時。


 目の前に、男の人がいた。

 目が合って、その人を見る。

 見慣れない人。

 左手は、銀色に光っていた。


「おい、人がいたぞ!」

「何を怖がっている。ここの学生じゃないか。ちょうどいい」


 見開いた目で周りを見れば、見慣れぬ人影が三つ。

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