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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
5.祖母の手ほどき、そしてまさかの遭遇
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24.尋問

「誰も、この館を知らないと思っていたのだが。どうやって、ここに来たのかな?」

「え、えっと、気ままに、歩いていたら、いつのまにかここに来ていて……」

 全ての始まりであった図書館で、誰もいないと思っていた螺旋の道で、なぜか真正面に居る男性に、コミュ障を発揮している。


 目を見たら、何も言葉を出せない。

 ふつうに他人と話す時もそうなのだが、この人は特別。

 真っ赤に、猛る炎のような、そんな目だからである。


「いつのまにか、ここに来ていた。なるほど。それは、これが初めてかな?」

「え、えー、んと……」

「どうかな。前にあったかなかったか。イエスかノーだ」

「覚えて、いません」

「この質問で、その答えはおかしい。違うかな?」

「……」

 口調は、声音は、優しい。でも、怖い。

「何か隠しているかな?」

「い、いえ……」

「まあよい。ところで、この館の本が一冊、ある時無くなった。君は何らかの事を知っているかもしれない。そう思ってね」

「は、はあ……」

 初級編、の事かな?

「何か、知っているかな」

「ええと…知ら、ないです」

 その言葉を聞いた相手は、ニヤリと笑った。

 怪しげな、目の輝きを湛えて。

「本当かな?」と、言いながら。


 相手は、突然、胸ポケットからペンを取り出す。

 空中に、金の文字を書く。

 しゃっ、しゃっ、すーっ、というオノマトペがよく合う、メリハリのある動きである。

 金の文字列を、どんどん重ねていく。


 私は、一切警戒していなかった。

 上級魔法の、杖魔法である事はわかった。

 でも、そのたぐいの魔法は、花のシャワーしか知らない。


 金の壁が、そこに生まれていた。

 そこに、彼は手を当てる。くるくる回り、模様と化す。

 ああ、書き終わったんだ。

 そう思ったのも束の間。


 その刹那。


 レース模様の真ん中から生まれ出て来たもの。

 それは、彼の目のように、

 赤く燃え盛る一匹の龍であった。

「ええっ……!」

 その場に固まることしか出来ない。

 魔法陣からその身を出し、図書館であることも知らないように、しばらくは塔の上の方を旋回した。

 次の瞬間、その目が、宝石のような透き通った目が、私の目線とぶつかる。

 いきなり急降下を始めた。

 もちろん、対象は私である!


 目の前を、昔の記憶が駆け巡る。

 だが、頭が死を覚悟したと思っても、

 体はそうでないようだ。


 手が勝手に動き、水魔法の印を、手が勝手に組む。

 はたして、火の龍は、水しぶきを浴びて上へ逃げた。

 指魔法は、あまりに弱すぎる。だが時間稼ぎが出来た。

 呪文の詠唱を始める。

 言い終われば、龍に向かって、無数の水の矢が龍に襲いかかる。

 とうとう、龍は消滅した。


 どこか複雑な気持ちはあったが、彼に声を掛けられ、我に帰る。


「やっぱり。ここにある本で学んだのだろう?」

 笑うように歪んだ口元が目に入った。

 彼の瞳の炎は、いよいよ燃え盛るようだった。

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