表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
5.祖母の手ほどき、そしてまさかの遭遇
24/102

23.開拓

 高くそびえ立つ、石造りの建物。ツタがまかれ、ラッカーで「撤去予定」と書いてある。荘厳な感じも、変わりはない。

 しかし、あの時も、本当にここで出会ったのかな。


 少し怖い気がした。魔道書があった時点で、普通の図書館でないことは明らかだ。

 でも、そろそろ中級が欲しいと思っていたところだったので、ちょうどいい、中を見たい、というのがまさった。


 あの時と同じ、螺旋の本棚。ぎっしり詰まった書物。

 暗いからか、高すぎるからか、一番上は見えない。

 時折、やはりネズミの姿。

 一番近くにあった本に手をかけ、中を見る。

 手を触れたら、光って文字となる。

 ああ、これも魔道書なんだ。

 これも、それも。結局、手当たり次第に見た本は、全部魔道書だった。


 どうやら、初級の次は中級、次は上級でさらにその上は専門書といわれるらしい。

 上級以上になれば、同じレベルの魔法でも、各分野の魔法に細分化されるようだ。

 ちょうど、同じ一つの教科でも、学校が上がるにつれ多く分かれていくように。

 見ていると興味深い。

『魔法科学校に携わる者へ』……これは、教育学かな?

『薬草魔法』……薬学っぽい。医学かもしれないが。

 いや、医学なら、ヒーリング魔法の専門書もあった。

 そういや、小さい頃読んだ学級文庫の中の魔女は、くしゃみの薬を作ってたっけ。

 あれ? 魔女といえばホウキのイメージだが、ここにはあるのかな?

 ……まあいいか。もう少し見てみよう。

『古代魔法研究』は、考古学とか歴史学みたいな何かだろうか。

『魔法道具』、『鉱石製錬魔法探求』、『味覚の魔法』……

 たくさん、面白そうな上級書、専門書の数々。

 でも、今の私の身の丈にあったのは、中級。

 上級書なんか、まだ早い。専門書は、もってのほか。


 中級は、もっと基礎的で、初級で扱ったものも含めた魔法の根本原理を深く学び、より自由に自分の思うまま操れるようになるのを目標としている。呪文や魔法陣の文法などだ。そうして、幅広く応用が効くように。


 そう、教育学みたいな上級書に書いてあった。

 肝心の中級書はいずこ?

 探していたらインク壺を見つけたので、魔法の墨と睨んでポケットに入れた。

 さてさて、中級書はどこだろう。

 おびただしい数の書物のうち、おそらく一冊だから、探すのも一苦労だ。

 でも、多種多様な本に目を走らせていくのは、なんとなく心躍るものだ。


 安心しきって、探し続けた。

 だって、前にここに来た時、誰もいなかったから。


 今日来た時も、人の気配はしなかった。

 はずなのに。


 目の前に、人影が見える。

 それを認めた時、身体中がびくんとなる。

 心臓が騒がしい。薄暗くて相手のことがよくわからなくて、余計に。


 身体中が、鉛のようにかたくなる。


 やがて、相手の方から口を開く。

「何を、探しているのかな?」

「え、えと……」

 目が、ばったりと合う。

 真っ赤な、燃えるような目だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ