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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
5.祖母の手ほどき、そしてまさかの遭遇
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22.散策

 夏休み終了まで、残り三日となった。

 ちょうど昨日、提出物は全て片付いた。

 おまけに今日は、いつもより早く目覚め、清々しい気分だ。

 ふっと思いつき、朝から家を出た。

 この近辺をぶらぶら歩こう、と思ったのだ。

 日光が照りつけるけれど、日陰を探しつつ歩こう。

 朝早いし、昼に比べれば暑くないだろう。


 近所の自販機で冷たい炭酸ジュースを買った。

 ぷしゅ、という音は、なんともいえないような気持ち良さがある。

 爽やかなレモンの味と、しゅわっという舌ざわりは、どことなく、「夏」を実感させた。

 道路を横切り、河原に出る。

 川に沿って歩けば、時折、颯爽と風が吹く。

 最近は、風魔法で涼をとることもできるようになったが、こういう、自然の風は、それとは一味違った気持ち良さがある。

 頬を撫でる、冷たい風。


 ふっと、鼻歌を歌いたくなる。

 周りに、私以外の人は居ない。

 今流行っている歌を、口ずさんだ。

 口ずさむついでに、その流れで呪文を唱える。

 氷魔法。

 唱え終わったとき、私の手にあったジュースは、音を立て、凍りついた。

 首筋に当てると、ひんやりする。


 何も考えず、気まぐれで歩いていた。

「わっ、こんなところに、横道なんてあったんだ!」

「すごい! 森みたい……写真撮る!」

「なんか幻想的だな、もうちょっと行ってみよ」

 一人でこんな事を呟きながら。

 側からみれば、ヤバい奴である。

 そして、この言葉から、容易に察しがつくだろう。



 完全に、道に迷った。



 それに気づいたのは、木々の隙間から見える太陽が、だいぶ高い事に気づいてからだった。

「そろそろ帰るか。……え、待って、ここ、どこ……?!」

 普通、森を散策する人というのは、道に印をつけるものだ。

 だが、それをしていなかった。なんて愚かだろう、と思っても、後の祭り。

 早い事、引き返さなければ。


 ここはまっすぐ行って、それで、……

 あ、これ、さっき見た気がする! いや、同じのかな?

 ……確か、ここで曲がったっけ。あれ、曲がり角なんて、あった?


 森というのは、どこを見ても同じなのだ。


 やっと、開けたところに来た。

 しかし、私の知った場所じゃない。

 そこだけ、木がなくって、広場のような、芝生のような。

 明るくて安心はしたが、一体、ここはどこだろう?


 でも、今まで進んで居たのと逆方向に歩いているはず。

 ということは、方向的には、自分の知ったエリアに近づいているはずなのだ。

 もっと行ってみる。

 またも森の中に入って、またちょっと不安になった。

 なり始めたところで、目の前に、木ではない何かが、ちらりと見えた。


 石で出来ているもの。

 それを、よく目を凝らし、見てみる。

 木々の向こう、さっきみたいな広場にあるっぽい。

 駆け抜けて、近づいて見た。


「あっ!!」

 思わず、声が出てしまう。


 見覚えがあるどころじゃない。

 私の魔法の、全ての始まり。

 例の図書館と思しき建物が、姿を現したのだから!

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