表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/102

17.作業

 一つ、また一つ。

 丸、四角、三角といった、幾何学模様を重ねる。

 覚えた魔法陣がこんなところで使えると

 思いついた自分に対し驚く。

 魔法陣は大体がシンメトリーであり、模様にすると美しいのだ。

 いくつもいくつも重ねてゆくと、それがわかってくる。

 だんだんと、スムーズに描けるようになってきたのも、一つの収穫だ。


「喫茶店」の壁が、模様で埋め尽くされた。


「すごい! なんか、それっぽくておしゃれ!」

「そ、そうかな……?」

「そうだよー! 幸先いいスタートだわー」

「なら、良かった……」

 他の子と話す時は、コミュ障発揮。

 いや、もっと何か言うことあるだろう。


 だんだんと、他の道具も出来ていく。

 基本はダンボールや新聞で作るのだが、パソコン、計算機、ケータイ、コピー機、机、カウンター……それらしいものが、次々と出来ていき、教室は、一気に学校というよりオフィスのようになってきた。


 一方、俳優陣も、進捗が生まれているようだ。

『君、もうそろそろタスクに慣れていい頃だと思うんだけど』

『…すみま、せん』

『まあいい。このテキスト、リバイズして。十五分で』

『…了解しました』

『あのね、君、目上の人には、「承知しました」って言うんだよ』

「そこっ!もうちょい、馬鹿にしてる感じ出していいと思うんだけどな」

「ええー、もっと?」

「てかさあ、現実にさあ、こんな会話、会社であるもんなの?脚本家さん〜」

「知らないけど、この劇では、そういう設定なの!!」

「えーと、……『あのねぇ、君ね、目上の人にはぁ、「承知しました」ってねぇ、いうんだよぉ、わかるかなぁ?』」

「キャラ変わってんじゃん、ウケる」

「やばー、ウザさマックスじゃん」


 物語は、会社内が舞台……なのかな。

 主人公の新入社員は、どやされたり、怒られたり。データ処理ミスの濡れ衣着せられ意気消沈、している時にふと通った喫茶店で、店長と話して元気を出す。それで、中間部分はよくわからないけど、最後はいい結果を出して晴れ晴れした気持ちになって、それで、ええと……


 去年よりは、参加しているはずなのだが、なぜちゃんとわからないのだろう。

 けどまあ、そういう話らしい。


 意気消沈している時には向かい風、そして成功して最後、会社を出たらあたたかな追い風が吹く、予定だという。つまり、結局、送風機の案は可決されたらしい。


「竜山さんさ、なんて呼ばれてる? 他の子に」

「ふつうに……竜山さん、かな」

「あ、そうなのか……って、もう三年なのに今更だけど、下の名前、何て言うっけ? ほんとごめんだけど……」

「ななみ。奈良の『奈』に、海の『波』って書くの。……奈良出身って訳でもないけどね」

「ななみ……じゃ、ななちゃんって、呼んでいい? というか、今の今まで名前知らなかったなんて……」

「えと、それは、うちの学校クラス替えあるし、さ。というか、基本、私、あんま喋らないし」


 少しずつ、道具係の子と打ち解けてきた。会話内容が、転校生のそれのようだが。

 転校生……そういや、瑠璃亜が転入するのはいつだったか。

 夏休み明けなら、文化祭の後だが、当日は遊びに来るのかな。

 ==========

 そんなこんなで、文化祭が一週間後に迫ってきた。

 いよいよ、最後の大詰めである。

 小道具はほとんど完成し、今は大道具を手伝っている。

「ななちゃん! 机の上の糊持ってきて!」

「あ、はい!」

「もう、あんま仕事押し付けちゃかわいそうでしょ!」

「いやいや、むしろ他の子に比べてあんまやってないじゃん、私」

「そんなことないよー!」

 むしろ、もっと色々させてくれた方が、役に立ってる感じがするからいいんだけど……

 そう思った時、ふと、去年と比べて成長したという感じがした。


 本番は、どうなるかな。楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ