12.低徊
私には、やりたい事がある。
先生には、「もっと別の場所に行けるのではないか」とか言われた。
でも、小さい頃からの夢が叶う場所。
高一の終わり頃には、だいたい一つの学校に決めていた。
上のように言われるくらいだから、推薦で行けるだけの成績は足りているはず。
いろんなイベントに、いつも参加したし。
高二で、オープンキャンパスに行った。
音楽系の、専門学校。
ソフトを使って、BGMとか作っていたように思う。
一つ、また一つ、音が生まれて、繋がって、一つになって。
繋がってできた糸が、絡まって、網のようになって、
ハーモニーが生まれて。
「魔法みたい」
そう、つぶやいたのだった。
あの時、すでに、母から毎日聞かされる「魔法」に対し嫌悪感を募らせていたから、それはすぐ撤回した。
でも、少し、神秘的と言っては大げさだが、不思議な感じがしたのである。
それを、ふと思い出したのだ。
魔法みたい……魔法?
でも、あれは、魔法ではない。
魔法使いの血筋の人が、魔力を使って繰り出す「魔法」とは違う。
魔法みたいだけど、魔法ではない。
でも、私のも、あの人たちがやっていたことも、形は違うけど、ある種の「魔法」ではないだろうか。
私のは、風を、水を、火を、自分の手で生み出す。
彼らは、音を、聞く人を魅了する音楽を、生み出す。
本当は、魔法使いの血筋でない人もみんな、みんな、ある意味、「魔法使い」なのではないか?
それが、いつ発現しようとも、みんな、「魔力」を持っているのではないか?
私の魔力は、他の人のそれより少し特殊なだけ。
非現実でかつ少数派だから、コンプレックスだったけれども。
そう考えれば、魔法使いであることは、他の人と比べて、特殊でありつつ、大差はないかもしれない。
使う人が少なくて特別な能力だけど、多かれ少なかれ、その人にしかない能力というのは、みんなそれぞれ持っているかもしれない。
みんなと異なる事。それは、今も、恐れていなくはない。
でも、みんな、みんな、「みんなと異なる」のではないか。
私の夢は、叶えたい。
けれど、魔法も、頑張ろうかな。
別に、今頑張るとは言わないけど、でも、自分の魔力に、誇りを持ったっていいはずだ。
みんな持ってる。でも、みんなと違う。
目の色が変わった時は、自分が「普通の人間」じゃない、別の生き物になったみたいで、怖かった。
でも、「普通の人間」ならば、皆、何かしらの特別な力を秘めているのではなかろうか。
いや、でも……
ああ、なんだか矛盾してきて、よくわからない。もう、これ以上考えないようにしよう。




