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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
3.本格的にやってみる
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11.享楽

 昨日、いろんなものを試した。

 水魔法。流石に室内で滝や雨を発生させるわけにはいかないが、霧を作れば、部屋の灯りで虹が見えた。

 お陰で髪と服が、じっとりと濡れてしまった。

 でも、心配いらない。火魔法で小さく弱い炎を作れば、ぶわっと熱気が出来て、少しの湿り気ならすぐに乾かせる。逆に、火魔法で作った炎が大きすぎた時は、水魔法で消せば良い。

 しかも、魔法では両手を使うのだが、右手と左手でいつも同じ形だ。

 もしかして、と思い、右と左を違う形にしたら、なんと、力の弱い二つの魔法を同時に使えたのだ。

 後から調べると、左右の手をずらしたりする事で、魔法の大きさや、作った風や火の位置をコントロールするという。

 結構、遊べる事に気付いた。


 でも、これが何かの役に立てば、もっといいのに。

 今朝起きて、昨日の復習をしつつ、そう考え始める。

 もとより、これで何かすごいことをしたいなどと思っているわけではない。初めから、遊びのつもりだった。でも、ささいなことでいい、何か役に立たないものだろうか?

「そうだ!」

 左手で、火の玉を作る。

 戸棚にあった、マシュマロを一つ右手にとる。

 うまく風を起こすと、マシュマロが浮かんだ。

 そのまま、遠火で、マシュマロに色がつくのを待つ。


 手が熱いけど、少しの辛抱だ。


 少し膨らんだ、気がした。




 初めのような、真っ白ではなくなってきた気がする。




 うっすらと、きつね色になった。


 そのまま、左手の指を解く。

 マシュマロと火の玉に意識を集中させすぎていたから気づかなかったが、赤くなっていた。

 後でちゃんと冷やそう。


 右手の指を解いた、その瞬間に、顔をマシュマロの下に持ってきて、口を開けた。

 刹那、なんとも言えぬ食感、そして甘みを感じる。


 そう。焼きマシュマロである。

 数日前、毎年恒例、高校の遠足で、BBQをした。

 その時余ったマシュマロの有効活用である。

 別の調理器具でやってもいいのだが、自分の作った火で、というところに喜びを感じる。


 その後、火魔法で食パンを焼いて、朝食にした。

 火力を強めれば、一瞬で食べられる。


 しかし……結局は、遊んでいるではないか。

 まあ、少なくとも今は、それでいいか。


 そういや、今回のBBQでは、例年通り、コンロの炭に火がつくのに、時間がかかってしまっていたなぁ。

 そういう時に火魔法を使えば……!

 火力によっては、安全に、かつすぐに、着火が可能だろう。

 イベントに貢献できる!

 来年、やってみよう……そこまで考えた時、はっとした。


 来年は、もう、高校生ではない。


 私の志望校に、新歓BBQはあるらしいが、もう、「いつもの」BBQではない。

 改めてそれが意識に上った。

 今は、魔法をするより、他のものを優先すべきだ。


 魔法?

 その言葉が、去年のあることを思い起こさせた。

 あの時、私はまだ、魔法に目覚めていなかった。

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