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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
2.始まりと失敗と出逢いと
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9.再考

 家に帰る。

 そして、今日あったことを、思い返してみる。


 あの少女――瑠璃亜――とは、あの後、少し喋った。私の直感は、幸いにも正しかった。というか、違っていたら恥ずかしすぎるが。つまり、彼女は数ヶ月後に転入予定の子で、何かの用事で登校して、応接室? から出た後、校門の場所がわからなくなった、という。

 結構近くだった気がするし、我が校はそんな複雑ではない。いや、三年目にもなれば普通慣れるか。

 初め、突然話しかけられてびっくりしたが、私が魔法使いと分かった時、自分の同類だという意識に駆られ、つい、馴れ馴れしく話してしまったというのだ。

「え、じゃあ、るりあ…ちゃん、は、魔法使いなの?」

「うん。まあ、あんまり由緒正しい血筋じゃないけど」

「ええと……?」

魔法使いにも色々あるのか? わからない。

「というか、なんで……どうして、私が、魔法使いと分かったの?」

「え、そりゃあ……その目が、何より……」

 私が何かを知らない事を、うろたえているように見えた。

 目……? といえば、昼、色がついててびっくりしたっけ。

「えーっと、実は、自分が魔法使いだってわかったのも、ごく最近なんだよね……」

「あ、そうなんだ」納得した様子。

 瑠璃亜は、もしかすると、ベテランの魔法使いかもしれない。

 また今度、機会があれば、見せてもらおう。


 彼女と別れて、家路について、今に至る。

 目、という話を思い出し、母に聞いた。

「ねえ、私の目さ、なんか変? カラコンつけてるんじゃないかとか言われたんだけど」

 母は、私に向き直った……ように見えた。

「その事、もっと早……」

「もっと早くいうべきだったと思うんなら、今言ってよ」

「いや、まあ、あんま大事じゃないから、まあいいかってなってたんだけどね」

「ほう?」もっと早……い段階で、言おうと思ってた、ってところか。


 魔法使いの魔力の発現したあとは、知る人が見たら、誰でも分かるようになる。いや、魔法のことを何も知らずとも、その変化には気づく。そう、それがつまり、目の色の変化なのだ。

「文字」を読んだ事のあるだけの人は、感情によって時々色が変わるだけ、らしい。しかし、一度魔法を使えば、もう、使う前と同じ色にはならないという。

 普段の目の色は、血筋による。感情によっても変わる。

 血筋による……か。確かに、私と瑠璃亜とでは、目の色が違った。

 そうだ…思い返せば、祖母も、青い目をしていた。幼い私は、後ろからおどかしたりして、黄色くなったり、赤くなったりするのを面白がっていたような気がする。


 また、昔の事を思い出していた。気楽だったなぁ、と。

 心が時間旅行から帰って来た時、現実に引き戻されてすぐふっと目に浮かんだのが、体育の先生だった。

 今度は自分が後ろから脅かされたように、ギョッとした。


「ええっ! じゃあ、服装点検の時とか、どうすればいいの?!」


 服装点検。生活指導室。その真ん中に居る先生。

 生活指導部長。担任の先生と比べても、厳格な事で有名。

 今まで、そういう指導とは無縁だった。無関心だった。なのに……


「うーん、カラーコンタクトじゃないって、言えばいいんじゃないかな……」

「言ったって、信じてもらえないよ!!」

「カラーコンタクトって色が変わったりするんですか、とか」

「色ついてる時点で、何かつけてると思われるでしょ?」

「その先生の前で目を洗う、とか?」

「服装点検の時は教室だし、生活指導室は水道ないって!」

「じゃあ、透明のコンタクトをつけておいて、外して見せれば……」

「名案。……でも、さ……なんで、もっと早く言ってくれなかったの?重要な事なのに。」

「重要かしら?」

「生活指導で引っかかったら、推薦も、出させて貰えない……」

「そうなの?」

「そう聞いたよ……少なくとも、自分たちの学校はね。……私は……私は、ちゃんと、きちっと校則守ってきた、それに、テストもいい点取れるわけじゃないけど、自分が出来る限りのことをしてきた、それに、それなのに、それでも……」

「……魔力の発現は、事故だったじゃない……」

「でも、魔法を使わなかったら、目の色、変わらなかったんでしょ?」

「あの時、自分の部屋で、私の知らない所で使ったよね?」

「そうよ、そうだけど、でも……教えてくれてたら……」

「そんな事言われたって……」


 矛先を母に向けたって、何にもならない。やらかしたのは、自分自身。何も知らない状態で早まったのだから。仕方ない。ひとまず、メガネをコンタクトに変えることにしよう。

 目の色は、魔法を使う前のようになる事はない…その言葉を思い出し、どきりとした。

 風魔法を初めて使った時と、違う感覚。

 自分は、不可逆変化をしてしまったのだ、と思った。目の色だけとはいえ、外見が変わった。魔法というものを、使えるようになってしまった。


 今まで、他人と異なる事を恐れていた。今も、それは変わらない。

 でも、全く異なるんなら、開き直ろう、とも思った。魔法、勉強して、やってやろうじゃないか、と。


 いっそ、魔法をキャリアにする? ――そうするわけにはいかない。

 私には、やりたい事が、あるのだ。

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