セントエルモ
すぅっと静まりかえる真っ黒いばかりの窓の外を見て思った。
ボクは・・・
人はとっても弱くて、悪くて、惨めですぐに迷子になってしまうけれど
だから、一人では生きてはいけないんだ。
底なしの真っ暗闇に放り出されたら
きっと怖くて、心細くて簡単に凍ってしまう。死んでしまう。
だから、
そのセントエルモを心強く思うんだ。
「ねぇ、生きてる?」
泥まみれになって倒れていたところに、そんな声が降ってきた。
ユサユサとその小さい両手でボクの身体をさする。
「お兄さん、山から来たの?それとも川?あにはからんや空から降ってきたなんて事は・・・」
「えっと・・・覚えていないんだ・・・。」
いつから眠っていたのか、寮で眠っていたのか曖昧だ。
世界五分前仮説とまで言わないけれど、実のところ今さっき、この瞬間にココでこうしていたのかも
不安になるほどに分からない。
「じゃぁ、ワタシが山の下まで送っていってあげる。そしてたらお兄さんの事知ってる人も居るかもしれないしね!」
その前に、朝ごはん一緒に食べよう。っとお腹の虫を手で黙らせつつボクは彼女に手を引かれる。
寒くて心細い世界に捨てられても
そんな光があるなら、きっと「なんとかなる」と思えたのだ。
過去も未来も何もかも見えない心細い日常も
誰かが居れば少しは心が落ち着く。
それが作品だと思います。
ワタシ自身、振り返ってみて「何故、小説なんだ?」とか考えてみて、
「あぁ、そっか」って思った事でした。
尊敬する作家さんだったり、物語の中のキャラクター、身近な先輩や先生。
そういう人達の生き様で自分が築かれていくもので、
だから、自分も誰かの影響になればと思って書いているのかもしれないですね。
自分が書いたもので、どっかの誰かが真剣に考えて歩いてくれるならいいと思いました。