それはある意味特権
イリックは随分前からとある疑問を胸に抱いている。
だからといってそのことを口にはしない。
最近はあまり見かけなくなったということもあるが、何より話題にしてはいけないと勘ぐった考えを持っているからだ。
イリックはそれをできない。
可能なのはネッテとアジールの二人。
ロニアもできるのかもしれないし、他の人達もやはり可能なのかもしれない。
少なくとも、自分の目で目撃したのはネッテとアジールの二人だけだ。
イリックも挑戦したことがある。ネッテに可能なのだから、自分にもできるはずだ、と。
結果は失敗に終わる。たいしてがんばってもいないが、そもそもがんばってどうこうできることにも思えない。
「それどうやるの?」
その一言が言えればどれだけ楽になれるか。
しかし、言えない。言ってはいけないような気さえする。
できないからと言って悔しくはない。ただ、やってみたいだけだ。
もしできたとして、それが何になるのか。きっと、一瞬だけうれしいだけだ。所詮、その程度のことでしかない。
でも、やりたい。真似したい。
なぜなら、おもしろそうだから。
力めばいいのだろうか?
肩の力を抜けばいいのだろうか?
真にその感情を抱けばいいのだろうか?
考えたところでわかるはずもなく、イリックは今でも時々挑戦しては失敗する。
旅に出始めた頃は、頻繁にネッテはそれをしていた。最近は無駄に知恵をつけてきたのか、全く見かけない。
もしかしたら自分がいないところでしてるのかもしれないが、だとしたら兄として少し恥ずかしくもある。
試し確認してみる。
「ネッテ。ミヤさんが使った戦技で、テレポートみたいに一瞬で移動するやつの名前知ってるか?」
「たしか~、猛進の極み!」
残念ながら正解だ。ロニア先生のおかげなのか、ガーウィンス連邦国に滞在中はどこかしらの図書館に入り浸るせいか、無駄に知恵を増やしている。
兄としては喜ばしいが、今回に関してはそうじゃない。複雑な気持ちにさせられる。
イリックは考える。どうすればネッテにそれをさせられるかを。
「どうしたの? 悩み事?」
「!?」
イリックは久しぶりに目撃する。
それが見たかった。
それを真似してみたい。
しかし、やはり次の一言が出ない。
どうやるの、それ。
それが言えればどれだけ楽か。しかし、不思議な力によって阻止される。
ネッテの頭上にはハテナマークが出現している。
兄はそれをやってみたいのだ。




