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創世機神ガインスレイザー  作者: きし
最終章『約束』
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 「――見つけたっ!」


 デウサエグザは他の創機と比べても空を飛び、宙を漂うだけでも特異な能力だが、空を飛ぶことに特化しているわけではない。それでも、クロウディアーネの力を使い全力を出さないと追いつけないスピードは、世界を創造した神様の名前を持つだけはある。

 真後ろから飛びかかるような真似はせずに、一度創機を上昇させて、デウサエグザの視界の外れから急降下をした。

 最初は米粒のような大きさだったデウサエグザが、少しずつ本来の形を目の前に取り戻していくのを見ながら、奴が決して本当の神なんかではなく、俺でも十二分に手が届く相手だということを知る。


 「鈴白!」


 ふいに名前を呼ばれたデウサエグザは空中で背泳ぎをするように、くるりと上からやってきたガインスレイザーに気付いた。


 『全てを知ってても、私を倒すつもりなのね』


 クトグアドラの剣が風さえも切り裂いてマナによる漆黒の刃を発動させた。だが、デウサエグザはその手の中から放ったマナの球体をぶつけることで相殺させる。

 背を向けていたデウサエグザの正面に移動する形でガインスレイザーを操縦し、宙に機体を停止させて振り返ると同時にアベルヤハターの槍を振り抜いた。


 

 『その槍……!?』


 デウサエグザのマナの障壁に突き刺さるが、障壁を破壊することには成功したものの創機本体には届いていない。


 『創機の性能に頼っているだけじゃないんだよ!』


 回避するために体を反らしていたデウサエグザだったが、体勢を元通りにしようとするのと同時に、片方の手から発生させたマナの球体がガインスレイザーへ叩き込まれる。


 『マナよ!』


 玲愛の声が聞こえたかと思えば、マナの障壁がガインスレイザーを覆うように発生した。直接的なダメージはほぼ皆無だが、衝撃を受けたことでプロペラのように空中でぐるりぐるりと回ってしまう。

 強引に体勢を立て直して、逃避を警戒してデウサエグザを見るが、戦く覚悟を決めたようで悠然とこちらを窺っていた。


 「玲愛、助かった……」


 『伊達にいろんなところで、新世界人と戦ってないですからね。昔に比べて、私も強くなってはずです』


 そもそも不意打ちで倒せる相手とは思っていなかったが、デウサエグザの何重にも張られたマナの障壁を突破することはなかなか難しそうだ。

 クトグアドラの剣で消滅させようとしても、次から次に薄い障壁を発生させるので、剣が到達する頃にはデウサエグザも回避した後になることだろう。それに、アベルヤハターの槍だけでは、俺は流歌のような力を持ってもいないし、あそこまで何発もマナのレーザー光線を連射できるほど器用にできそうもない。


 『――空也! ボーとしないでっ!』


 我に返り、前を見ればデウサエグザの姿は見当たらない。


 「あがっ――!?」


 頭をがっしりと何かで掴まれる感覚がした。モニター越しに上を見れば、デウサエグザの大きな手がガインスレイザーの頭を握りしめていた。


 『余裕だね、空也。……今、自分がどんな存在を相手にしているのか忘れたかい?』


 冷たい鈴白の声を聞き、霧散していた集中力を取り戻す頃には、頭を掴んだままのデウサエグザが空から地面へと急降下していた。


 「は、離れろ!」


 とっさに剣を走らせたが、デウサエグザの何枚にも重ねられた障壁が邪魔をする。その時、これを消滅するよりも、ガインスレイザーが叩き落とされる方が早いことを察した。


 「玲愛、頼む!」


 藁にも縋る思いで玲愛にマナの障壁の発生を頼んだ。直後、地面まで後十メートルほどのところで、ガインスレイザーは地面に叩き落とされた。


 「がはっ――!」


 障壁を張ったが落下の衝撃にガインスレイザーは落下した瓦礫から、別の瓦礫へとボールのように跳ねて、地面を転がった。


 「くっそぉ……」


 幸いにも頭を潰されたり、どこかを損傷した様子はなさそうだが、確実にダメージは蓄積されているのを感じられた。

 周囲を見渡せば、崩壊したどこかの街に叩き落とされたようだ。近くのビルは半分ほどのところから折れ曲がり、隣のビルに支えられ、足元の瓦礫も商業施設だったのか衣料品や生活用品が散らばっていた。

 ガインスレイザーを立ち上がらせれば、足の下からは潰れたショッピングカートが黒ずんだ床を転がる。

 デウサエグザを探し見つければ、元が何だったのか分からないほどの瓦礫の山の上に立っていた。


 「鈴白! 街をこんな風にしてまで、お前がしたかったことはなんなんだよ! 本当にこんなただ壊すだけの、つまらないことだったのか!?」


 デウサエグザに動きがあった。ちょっと手を伸ばした程度の動きをしたかと思えば、マナの球がその手から放たれた。幸いにもデウサエグザに注視していたことが良かったのか、無事に回避できるだろうと考えた。しかし、俺の見通しは甘かった。


 『残念賞を贈るよ』


 マナの球体がガインスレイザーの前で爆散した。創機の内部まで侵入してきそうなほどの熱を感じ、全く防御をしていなかったガインスレイザーは爆発に吹き飛ばされた。


 『すぐに立つんだ』


 「くっ……分かってる!」


 他人事のような託矛の声に途切れそうになる意識を必死に繋ぎつつ、ガインスレイザーを倒さないように努めた。

 予想通り、デウサエグザの追い打ちが来たようで、例のマナの球が迫って来る。今度は一発ではない、頭上にも横方向にも前方にも、マナの球が降り注ぐ。


 「だったら、ぶっとばす!」


 すぐさま、クトグアドラの剣からマナの刃を放つ。刃に触れたマナが消え去るのを確認するよりも早く、消し飛ぶマナの中をかいくぐりつつ、デウサエグザにに接敵をする。


 『空也、これがキミから見たらつまらないことかもしれないけど、私からしてみれば、これ以外の方法は思いつかないんだ。どうやって自分を表現していいのか分からない私は、こうやって壊すことしか知らない。……そう、こうやって壊す方法しか!』


 デウサエグザに接近できたと思った。頭の奥の方が冷たくなったのを感じて、その原因を考えるよりも早く横に飛んだ。

 目の前の瓦礫の山を吹き飛ばし、巨大な蛇が目の前を通り過ぎる。正確には、マナによって生み出されたエネルギーの塊が蛇の形をしているだけなのだが、それは俺が世界崩壊前に見たバケモノに重なる。


 「また誰かの恐怖の具現化か!?」


 『おしいよ、私の恐怖の具現化さ!』


 ガインスレイザーとデウサエグザの間に飛び込んで来た蛇の体内から、触手のようにして無数の手が伸びてくる。まるで死者が、俺達を地獄に引きずりこもうとしているようだ。迫ると同時に切り払えば、諦めて後退を選ぶ。


 『空也さん、あのバケモノ……』


 「ああ、あんなのは、ここで倒さないといけない!」


 英里佳の一言に、俺は自分が考えたものと同じものを英里佳も想像しているのだと知った。英里佳の考えている通り、あの蛇は彰人の成れの果てを彷彿とさせる。

 きっと、彰人はあのバケモノを生み出す過程で実験に失敗した。そう考えれば、感情に異常をきたした彰人と心や肉体を失った彼女達には重なる部分もある。何かを失うことでしか手に入れることのできない最低な能力の成功例が彼女達なのだ。

 目の前の敵は鈴白だというのに、俺の中にはぶつけようのない怒りが湧いて来る。


 「もう、やめてくれぇ――!」


 消滅の刃を発生させ、蛇のバケモノを消し去った。囮代わりだったのか、デウサエグザが再びマナの球を発射する。体を捻りつつ槍で弾けば、背中のジェットブースターの点火して、一気に距離を詰めた。


 『空也は世界で唯一、私を救えたかもしれない。でも、それはもう無理なのよ! 簡単には、私の絶望は消えない!』


 近づいたかと思えば、デウサエグザの足元の影が伸びた。いや、それだけじゃない、影は横にも広がり、デウサエグザを中心に巨大な丸上の影が拡大していく。まずいと思った俺は、急ブレーキをしてガインスレイザーをバク宙させて、乱暴だがジェットブースターに再び火を入れて後退する。

 不安定だが何とか地面に擦り付けるようにして着地した。黒い影からは、無数の手が伸び、なおもガインスレイザーを捕らえる為に隙間なく蠢く。

 

 『この手は、私に迫る人間達の手だ。研究で体を弄り回され、逃げても、逃げても、たくさんの手が私を絡め取ろうとする。怖かったのさ、人間の手が、その全てが私を苦しめて傷つけるものにしか見えないんだ! 空也は見たことないでしょ、街中を歩く人間達の手の中に刃物を持っている幻覚を見たことが!? 知らない人間と話をして、涙が止まらなくなったことはないだろ!? この世界中の人達が、私に対して暴言を吐いている幻聴を聞いたことがあるか!?』


 どれだけの苦しみを押し付けられたのだろう。

 どんなに悲しい思いを強いられてきたのだろう。

 想像もできない怨嗟が、人の手という形でガインスレイザーを津波のように飲み込む。


 『目を逸らしちゃダメ! 立ち向かって!』


 やっと、ああ、と返事をすれば、消滅の刃で暗闇を切り裂いた。吹き飛ばすと同時に、アベルヤハターの槍を構えてひたすら突き進めば、目の前にはデウサエグザ。


 『――どういうつもり』


 ガインスレイザーはデウサエグザの前でピタリと槍を止めていた。

 託矛が、甘い男だ、と言ったのが聞こえたが、俺は聞こえないふりをする。


 「このまま戦えば、彰人や流歌と同じことを繰り返しちまう。同じことを繰り返しちまったら、前に進めない気がするんだ」


 『……空也、泣いているの?』


 「ああ、泣いてるよ! 悪いか! だって、おかしいだろ!? こんなにも鈴白は辛い思いをしているのに、誰一人同情しないなんて!」


 『おかしいのは、空也だよ。私は何度も世界を滅ぼした悪魔のような存在だよ。私を生かしておけば、世界は終わる』


 「悪魔じゃねえ! お前は、まだ人間だ! 苦しんでる鈴白に、悪魔なんて言えるわけがないだろ!」


 『……どうして、今さら……! 今さら、遅いんだ!』


 鈴白の叫びに呼応するようにして、邪悪なマナの波動がデウサエグザから溢れる。突風のようなマナに煽られて、ガインスレイザーは風に流される紙切れのように軽く飛ばされる。

 強引に姿勢を戻そうとするが、着地すらも許さないようにマナの触手が無数に追いかけてきた。


 「――鈴白は、まだ何も終わってない!」


 クトグアドラの剣が横に薙げば、消滅の刃が触手を散らす。空中で二度回転をして、デウサエグザから離れるが、こうやって距離をとり続けるのももう何度目になるのだろうかとも考える。

 今のデウサエグザは安定していない。だったら、ガインスレイザーでも勝機はある。しかし、そうしてしまえば、鈴白を救えない。

 俺が葛藤している間も、地面はデウサエグザを中心に黒い影が広がっていく。


 『私、分かるよ。この影は、たぶん絶望の世界への入り口。このままの勢いで広がってしまえば、鈴白ていう調律者がいないまま、絶望が世界を飲み込む』


 「てことは、このまま時間をかけ続ければ、いずれ世界は絶望に飲み込まれて、今度こそ元通りにはならないってことなんだな」


 声は聞こえなくても、澪音が頷いたような気がした。

 ガインスレイザーの足元まで近づいてきたので、一度空中に飛ぶ。さっきからデウサエグザの攻撃が無いのは、攻撃できる範囲から離れることができたからなのか。いいや、きっとこのまま見ているだけなら、いずれ世界が崩壊することが分かっているからだ。ただじっと、鈴白はデウサエグザという闇の中で絶望を待ち続けているんだ。


 「賭けだ。……ギリギリまでガインスレイザーを近づけてから、鈴白を救う」


 『鈴白を倒すつもり?』


 俺の提案を聞き、沈黙が訪れた。

 まだ夢物語を見ているのかと思っているかもしれない。託矛なんかは絶対に反対しているに違いない。英里佳だってドライな部分がある。そんなチャンスが訪れたら、無理をしなくてもそのままとどめを刺した方がいいに決まっているはずだと考えているだろう。


 『行こう、空也』


 澪音の一言が、暗闇に染まろうとしている世界に響いた。


 『鈴白は、ある意味では私達の姿なんだと思う。託矛、玲愛、英里佳、千鶴、私。……私達全員が、ああなっていた可能性がある。でも、そうならなかった。今の私達は、鈴白を止める為にここにいるんだよ。……これって、新しい未来なんだ。世界を破壊しなかった私達が、頑張って手に入れた新しい未来。……その未来を、ここで終わらせちゃいけない。そして、その未来には、鈴白がいないといけない。……だって、鈴白を救うことが、私達を救うことになるんだよ。みんなは、鈴白のことをどう思う? みんなの抱えるような憎しみの気持ちで見られたら、どう感じる? ――本当に鈴白は、倒さないとダメなの?』


 空から光が消え、闇がガインスレイザーの姿すら掻き消し、視界は完全に何も見えなくなった。そんな世界だというのに、澪音の言葉は太陽のように輝いていた。

 ガインスレイザーの右腕、クトグアドラの剣を手にした腕が勝手に持ち上がった。


 『私も、鈴白とは何も変わりませんね。確かに、一歩間違えれば、あそこにいるのは私でした。もう彰人お兄ちゃんのような人を見るのは、勘弁してほしいですね。……救いましょう』


 背中のクロウディアーネのジェットブースターから炎が上がった。


 『エノス能力を恨んでいました。誰かを操る能力なんて、そんなものは本当ならいりません。あげられるなら、誰かにあげたい。そこまで考えていました。……どうして、私をこんな世界に生んだとイヴやエノスを憎みもしました。……私はただ胸に抱えていただけで、世界を壊すなんて選択しなかった。私と鈴白さんの違いは、それだけ。……助ける理由は十分です』


 玲愛に次いで、託矛も口を開く。


 『俺は復讐をするためにここにいる。奴の望みが、この世界と共に死ぬことなら、俺はそれを止めるだけだ』


 アベルヤハターの槍が闇を照らすように煌めいた。


 『流歌様はこういう時は、空也さんに協力するはずです。それに、流歌様は前々から鈴白さんのことを気にしている様子でした。……彼なら、救う。私は、ただそれに従うだけです。流歌様の意思は私の死ですから』


 ガインスレイザーの全身をマナが駆け巡っていくのを感じた。腕や足が、戦おうと脈動しているような気がする。マナが創機に行き渡っていくのを感じながら、ガインスレイザーが闇の中に飛び込んだ。

 アベルヤハターの槍を前に向けて、さながら洞窟を進むランプのように暗黒を淡く照らしながら突き進む。

 デウサエグザの場所が変わっていないなら、このまま真っ直ぐ行けば到達するはずだ。


 「見えた!」


 闇を抜けた先はぽっかりと空洞になっていた空間だ。周囲数キロが、デウサエグザを中心に空間を作り出し、風も吹かなければ、外の様子もうかがえない。ひたすら黒一色のドームという感じだ。


 『ガインスレイザー』


 デウサエグザがこっちに気付いた。


 『行ってください、空也君!』


 急に体が重力を感じる。地面の細かな瓦礫をガインスレイザーの二本足で押し潰して、走り出す。

 頭上では、天井の黒いドームから襲い掛かる大量の手からガインスレイザーを解除したクロウディアーネが囮として引きつけていた。

 澪音に、前、と言われて、気付いた時には地面から無数の黒いマナに作られた剣山が出現するところだった。


 『空也さん、ここはお任せください』


 赤と橙色の二色を組み合わせたような創機、クトグアドラが出現し、目の前の剣の山を消滅させた。それで攻撃は止むことなく、頭上からも地面からも剣がクトグアドラに降り注ぐ。


 「英里佳っ……!?」


 『いいから、行ってください!』


 クトグアドラがその場で回転すれば、剣が内から外へと広がるようにして周囲のマナの剣を消滅させた。ただし、無傷ではなかったようで、攻撃直後のクトグアドラを数本の剣が貫いていた。

 俺は歯を食いしばり、クトグアドラの隣を走りすぎる。デウサエグザまで目前だった。


 「鈴白っ――!!!」


 『消え去れ、ガインスレイザー』


 『声が……!?』


 鈴白の声が低いしゃがれた声に変わっていた。地獄の底から呻くような、おぞましい声だった。


 『私はデウサエグザだ。どうやら、この娘の力によって残留思念となっていた私の依代になってくれたようだ。好都合だ、この私が娘の願いを叶えてやろう』


 「神が蘇った!?」


 『空也、違うよ。私もイヴやエノスに会ったことあるけど、アレは違う。……たぶん強くなりすぎた鈴白の心が、エノスの力と暴走して、デウサエグザに成り代わろうとしているんだよ。もしかしたら、本当に世界の一部に欠片だけでも残っていたデウサエグザが乗り移っているかもしれない。……でも、あんなのはまやかしだよ!』


 澪音の言葉に俺は頷きで返す。今さら、誰が敵でも関係ない。

 一切腕すら動かすことのないデウサエグザから閃光が迸れば、マナの光線がガインスレイザーを掠めた。


 「があぁ――!」


 致命傷は受けていないにも関わらず、ガインスレイザーは強制的に地面を転がされることとなる。

 ガインスレイザーが立ち上がる暇もなく、二度目の光線が発射される。


 『マナを殺します』


 千鶴の声にほぼ条件反射的にアベルヤハターの槍のマナを込めて、槍の先端で光線を受け止めた。相殺することに成功したことに喜ぶ暇もなく、デウサエグザへとガインスレイザーが駆け出した。


 「鈴白……いや、デウサエグザ! てめえが、何度絶望を語っても人間を滅ぼすことなんてできない!」


 接近すればするほどに光線はさらに苛烈に、そして、狙いをつけていた状態から乱射へと変わる。


 「そうやって、滅ぼすことだけが救いか!? 違う、変われば良かったのに! 壊す以外の方法しか知らない神なんておかしいだろ!」


 マナの光線がガインスレイザーの肩を腰を足を掠め続けた。

 もう後退することも逃げることもできない。だったら、進むしかない。


 『神は全てを生み出した存在だ。作り、育み、奪う、それが神だ。その神が終末を望むんだ。従うことが正しい』


 閃光を槍で吹き飛ばし、コマのようにガインスレイザーを振り回すことで急所をカバーする。

 操縦で手一杯の俺の耳に澪音の声が聞こえてくる。


 『正しいわけなんてないわ! 私達はイヴやエノスに力を授かった。でも、それは大切な人達を守る力! それにね、私はデウサエグザを神として崇めたことなんてない! 神なんかじゃない、アナタは破壊者! 生むのも壊すのも勝手だけど、生まれた以上は、ここは私達の世界よ!』


 マナ光線のカーテンを潜り抜けて、ガインスレイザーはデウサエグザの隣に回り込む。


 「デウサエグザ、お前は知らないだろ! 命を懸けて大切な人を守ろうとする人の気持ちを!」


 アベルヤハターの槍を突きだすが、地面から現れたマナの剣によって槍を弾かれた。体勢を崩したガインスレイザーにマナの拳が突き刺さる。


 「ぐっ――!? こんなもので……! 俺達を家畜程度にしか思っていないお前には分からないだろ、人がどうやって他人を愛して、他人を想い続けられるのかを、お前には理解できないだろうな!」


 地面にガインスレイザーの顔が叩きつけられる前に、足で踏ん張り、再び槍を放つが、今度は空から降り注いだマナの矢によって左腕を切り離された――。


 『愛など想いなど、全て私が作り出したものだ』


 「――じゃあ、答えてみせろ!」


 『子を産み落とすための幻想だ』


 アベルヤハターがガインスレイザーから解除されていく。しかし、落ちていく槍を右手で受け取った。右手で槍を握り直し、後退しかけた足を前に動かす。


 「その答えは不正解だ」


 『何を言う』


 絶望的だというのに、一歩間違えば命が奪われるというのに、俺の口元から笑みが浮かんでいた。

 握った槍にマナの光が満ちていくのを感じる。俺の力でも、澪音の力でもない。ただし、声が聞こえた。


 ――空也、僕も力を貸すよ。


 アベルヤハターの槍にマナの輝きが宿った。


 「人も神も愛や想いなんて説明できねえよ! 苦しんで嘆いて、それでも明日を笑い続けることができる。――そんなわけがわかんねえ存在が人間なんだ! 答えは、分からないってことだ!」


 とうとうデウサエグザに槍が届いた。溜め込んだマナの力が槍の先から放出し、アベルヤハターの槍がドリルのように回転し、デウサエグザの障壁を突き破り胴体を貫通する。


 『私の創造した存在が、私を殺すのか?』


 まだ余力が残っていたのか、デウサエグザから爆発のようなマナの波動が弾けた。


 『「うおおおおぉぉぉぉ――!!!」』


 俺と澪音は咆哮し、波動から耐え抜く。しかし、手にしていた槍が捻じ曲がり、指先から吹き飛ばされる。

 ありがとう、流歌。と心の中で呟けば、デウサエグザの胴体の穿たれた穴に意識を集中させる。


 「殺す? ……神は命を語らない」


 崩れかけた右の拳を握りしめた。

 たくさんの人の想いを全身全霊、その一撃に込める。


 「――命を語った時点で、てめえは神じゃなくなってるんだよ!!!」


 拳に満ちたマナが放たれた。


 『――イグニッション・バースト!!!』


 ガインスレイザーの拳がデウサエグザの胴体を打ち砕いた。そして、ガインスレイザーの手の中には――。

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