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創世機神ガインスレイザー  作者: きし
最終章『約束』
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 ようやく、俺達はこの世界に帰ってきた。


 随分と久しぶりに感じるガインスレイザーの操縦席が酷く懐かしい。

 基地で鈴白のエノス能力を受けた後に意識を失い、一人でどこか孤独な世界を旅していた気がする。そんな寂しい夢は、突然現れた澪音によって粉々に砕かれた。あのまま澪音が現れなければ、永遠にあの世界に囚われたままだったのかと思うと身震いがする。


 『おかえりなさい』


 既に英里佳はクトグアドラのバスターソードに姿を変えて、ガインスレイザーの右腕と一体化をしていた。

 俺に言ったのか澪音に言ったのか、それはきっとどちらでもいいことなのだろう。


 「「ただいま」」


 声を揃えて出た再会の言葉を口にしたことで、地に足がついたような気がした。


 『空也、今の状況は――』


 「――なんとなく、分かってる!」


 返事をすると同時に、脚部の関節を限界まで曲げて力任せに飛んだ。地面に降り立てば、エグゼノヴァク、クロウディアーネ、アマツミノオウの三機が一斉にデウサエグザに攻撃を仕掛けているところだった。

 アマツミノオウが先制攻撃として放った矢をデウサエグザはマナによって作り出した障壁によって弾けば、すかさず飛び込んで来たエグゼノヴァクが二本の刀を走らせる。だが、デウサエグザの動きも早く、ふわっと質量を感じさせない動きで宙に浮けば、刀が空を切ったばかりのエグゼノヴァクに踵を落とした。


 『ここで、終わらせる』


 低い託矛の声が聞こえれば、空中に浮いていたクロウディアーネの周辺に数十体のマナによって生成された創機の群れが出現。そのまま、デウサエグザに降り注いだ。


 『マナの力で、私に勝てると思うなっ!』


 デウサエグザが手を空中へ向ければ、空からやってくるクロウディアーネの創機の群れに対して、足元から黒いマナの創機が墓場から蘇る死者のようにして地上へと躍り出た。ほぼ同数の創機と創機が衝突し、花火のように世界は煌めいた。

 俺は仲間達が用意してくれたチャンスに乗っかるようにして、ガインスレイザーを疾走させる。


 「待たせたな! 鈴白っ!」


 『――空也っ!』


 デウサエグザの懐に飛び込み、躊躇なくクトグアドラの剣を走らせた。消滅の刃は間に入るように出現したマナの障壁を消滅させた。


 「だああっ――!」


 さらに一歩前進し、二度めの剣を振るう。


 『そう簡単に届くと思うな!』


 新たに現れたマナの障壁は、何枚にも重ねられたもので、剣を振り終わる頃にはデウサエグザはガインスレイザーから距離を離して、空中に立ち位置を変化させていた。


 『……結局、この戦いまでもイヴやエノスの掌の上てことね。でもいいわ、こここを切り抜けさえすれば、私も邪魔する者は現れない。私の邪魔をするお前達を完全に滅ぼして、また絶望の続きを始めるわ』


 「やらせねえよ! お前にとっては壊していい世界かもしれないが、俺達にとってはかけがえのないものだ! 命を懸けて大切な人達が守ってくれた、ただ一つだけの大事な世界なんだよ!」


 『綺麗事は聞き飽きたよ、空也っ……!』


 デウサエグザが手をかざすと、黒いマナによって作られた獣達が現れた。虎の頭をしながら、体は爬虫類そのものであったり、蛇のようにどこまでも長い体を持ちながら顔はワニであったり、翼の生えた二足歩行の牛の怪物であったり、異形、神話、子供の夢想、そのありとあらゆる創造を具現化させたような怪物達がデウサエグザを守るようにして宙に漂っている。

 ざっと見ただけでも数は二十体以上、こいつらを無視してデウサエグザには辿り着けないだろう。


 『絶望は、終わらせない』


 「希望は、負けない」


 剣を構えて、まず正面からやってきた首が三つもある巨大な犬に飛びかかろうとしたら、俺の前で犬の首は三本とも八つ裂きにされた。そのまま、黒いマナの粒子に変わり巨大犬は消滅した。代わりに、ガインスレイザーの前には分身し三体になったエグゼノヴァクが立っていた。


 『ここは、俺に任せろ。お前には、やるべきことがあるはずだ』


 「統矢……。助けに来てくれたんだな……」


 『お前に馬鹿をうつされただけだ。それに、お前に死なれては困るんだよ。……お前は、俺に俺の正義を終わらせろと言ったな?』


 「そういや、そういうことも言ったな」


 『――じゃあ、ここからが俺の新たな正義の始まりだ。お前の問いかけへの答えは、結果で返す』


 今度、統矢と戦うようなことがあれば、その時は勝てないかもしれないなと思った。そして、ガインスレイザーとエグゼノヴァクは囲み飛びかかって来た共通の敵を背中を預けて切り裂いた。

 決心した俺は、手を掲げた。


 『――玲愛! そこには、託矛もいるな! お前達の力も貸してくれ!』


 『しょうがない!』


 『空也君!』


 クロウディアーネが無数のマナの創機を生み出し撒き散らしながら、ガインスレイザーのもとへと飛来する。もう少しでクロウディアーネに近づこうとした時だ。俺達の間に大剣を振り上げた、頭が鹿の人型の怪物が割り込んだ。

 ふいの出現に反応できなかったクロウディアーネは体勢を崩し、地上に落下する。そして、鹿男は大剣をクロウディアーネに振り下ろした――。


 『――あたち達のこと、』


 一瞬にして、鹿男が細かくカットされれば、さらに小さな粒子となり散った。


 『忘れないでよっ!』


 「その声は……」


 砂嵐を巻き上げ、ハイソリギアが俺達の前に現れた。


 「ヒカリ! 絵恋!」


 『私達のところには、招待券が来なかったからね。全力疾走でここまでやってきたよ』


 『空也、さあ行って! 学年ナンバーワンがこんなところで負けちゃったら、あたち泣いちゃうよ!』


 温かい二人の言葉に力を貰い、滑空してきたクロウディアーネに手を伸ばした。


 『「レゾナンス・アクト!!!」』


 光に包まれたクロウディアーネがガインスレイザーに吸い込まれれば、背中には例のひし形のジェットブースターが装着された。右腕にクトグアドラ、背中にクロウディアーネを装備し、ガインスレイザーは地面を蹴る。今度の跳躍は、ただのジャンプではない。空を飛んでいくための、大きな一歩だ。

 一直線にデウサエグザへと向かって行くが、突然目の前に黒いマナの球体が出現した。

 無視していこうかとすれば、黒い球体が振動し、そこから次から次に黒いマナの怪物達が吐き出された。


 「なっ……!? あそこから化け物が出てきているのか!? だったら――」


 ガインスレイザーがクトグアドラの剣を上段に構えて振り下ろした。


 「――消滅ノ刃!」


 剣の軌跡はマナの光となり、黒い球体へと向かえばぶつかると同時に消滅した。


 「よし、早くデウサエグザを追いかける!」


 『――待って、空也。あれ見て!』


 強制的に目の前のモニターが切り替われば、視界のあちらこちらで黒い球体が浮かび、そこから次から次に怪物達が生みだされている。

 俺は舌打ちをして、止めどなく出現する黒い球体を消滅させるために剣を振り回す。


 「これじゃ、きりがない……!」


 ガインスレイザーの攻撃よりも生み出されるペースの方が早すぎて、間に合わない。他の仲間達も奮戦しているが、このままでいつか数で圧倒されてしまう。

 胸の奥の不安が膨れ上がろうとしていた。しかし、そんな不安も吹き飛ばすようにして、俺は何もしていない黒い球体の一つが爆発した。


 『ここは僕に任せて先に行けってね。くうぅー一度言ってみたかったんだ!』


 「――東先輩!」


 地上を見たら、アベルヤハターと戦った時に両手に持っていた東先輩の創機のマシンガンが変形してスナイパーライフルに変形していた。次から次に引き金を引けば、怪物を貫通し黒い球体を貫いていく。


 『言い忘れるな、私達に任せろだ』


 「椿先輩!?」


 ギラリと何かが煌めいた。直後、ガインスレイザーに飛びかかって来ていた怪物達の数体が一撃で真っ二つにされていた。ガインスレイザーの脇を偃月刀を持った創機が長い跳躍を終えて地上に落下していく。落ちていきながらも、周囲にいた怪物達は次から次に両断されていった。


 『行け、空也!』


 ガインスレイザーの眼前を地上からの矢が通り過ぎれば、頭上の黒い球体が弾け散った。矢の放たれた方向では、アマツミノオウが俺を見ていた。


 『この世界の未来を、さっさと救ってこい!』


 頼もしい剣先輩の声に、俺は自分のやるべきことが一つなのだということに気付いた。

 ここは、みんなに任せよう。俺がやらなければいけないのは、デウサエグザを倒すことだけだ。

 俺達の希望の炎は、これだけではなかった。


 『――火桜空也! 海凪澪音!』


 黄金の輝きが、怪物の一体を貫いた。消滅した怪物から、傷ついた翼でガインスレイザーの前までやってきたのは、アベルヤハターだった。まだ修復が完全ではないようで、ところどころ損傷が目立つ。


 「お前、阿斗里千鶴か……」


 『これは、きっと流歌が望んだことだから……。私は流歌の為に生きないといけない、そのためには……この世界が必要なんだ……』


 アベルヤハターが槍を握ったままで拳を突き出した。


 「……ありがとう、力を貸してもらうぞ」


 ガインスレイザーはアベルヤハターの槍を受け取るようにして握った。すぐにマナの光に包まれたかと思えば、ガインスレイザーの左腕には黄金の鎧が装着され、左手の中には新たな輝きを手にした一本の槍が握られていた。

 すぐさま俺はデウサエグザの消えた空を目指して、さらに上を目指す。


 『千鶴さん』


 おもむろに澪音が千鶴の名前を呼んだ。


 『なに』


 『私ね、デウサエグザの絶望の世界で流歌に会った。その時に言われたの。……千鶴を頼むって、あの人が最後の最後まで大切に思っていたことを忘れないでほしい』


 『……ありがとう』


 少しだけ涙声混じりの声で千鶴が言った。それ以上の会話はなかった。

 だが、負けられない理由が増えた。

 友達のつもりだったのに救えなかった友人の最後の願いを叶える為にも、ガインスレイザーはさらに加速した。

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