認識外
「聞きましたよ!奥様! 後釜を決めたら、領主様と離婚して実家に帰るんですって!?」
旦那様の人気のなさに意気消沈していると、ひとりの侍女が乗り込んできました。
どこからの情報ですの!? 離婚しませんわよ。
こんなにもわたくしたちは仲睦まじいのになのに何を言ってますの? ありえませんわよ。側室候補を探しているのですわ。
「仲睦まじいのに側室を探しているんですか?」
「そういうことなら、何でわたしに聞いてくれないんですか!?」
えぇっ!? まさか、貴女・・・怒鳴り込んでくるほど旦那様のことが? 知りませんでしたわ。
そんなにも意欲があるのなら、候補に考えないでもないですわ。
「いえ、お断りします!」
一刀両断で即答しました。何故か、してやったりと言わんばかりの笑顔で。
じゃあ、何しに来たんですの?
「先輩のためです!」
先輩・・・? そう云えば、先に聞いた娘も言ってましたわね。
侍女の視線の先には一言も発言せず、一連を成り行きを身の置きどころがなさそうに控えていた女の子。
えぇっ!? まさか・・・このスィが!? どこを!? 旦那様のどこを見て好きになりましたの!?
てっきり人気が無いと落胆していましたのに!? 意外な伏兵の登場ですわ。
いけません。平常心ですわね。
居座ろうとしていた侍女を何とか宥めすかして帰し、スィを問いただします。
「本当ですの?」
彼女はうつむいて気まずそうにしています。
ついつい強い口調で聞いてしまったので、怖がらせしまったようです。
けれども、怒っている訳ではありません。全くの予想外だったので、只々吃驚してしまっただけです。
再度優しく問いかけると、スィはおずおずと口を開きました。
「奥様のご存じのとおり、領主様のお優しい人柄に惹かれてしまいました」
ご存じ・・・?
「もちろん、気づいていましたわよ。繊細な話題なので口にしなかっただけですわよ」
あの軟弱な人柄に引いた?のに好きになったって変ですわね。母性本能がくすぐられたという事でしょうか?
スィが不安そうな表情でこちらをうかがっています。
いけませんわ。毅然とした態度をしないと不安にさせてしまいます。
ほんの僅かばかり取り乱しましたが、問題ありません。部下の人心把握のために心理学関係の本だって読んでいます。
彼女なら、わたくしを軽んじることもないでしょうし、良いのかしら?
でも、スィがねぇ・・・
とても可愛らしい娘ですし、他にもっと良いご縁があると思うのだけれど、本人が納得しているのならば仕方りません。もう言う事はありませんわ。




