領主を継いだので無事を確かめてみた
隣領地に行っていたレイさま一行が帰ってきた。
多少は気になったので見に行ったが、行った時より一名足りないよな?
一緒に帰ってきた年嵩のおっちゃんに聞いてみる。というか、こんなロートルを連れて行ってたのかよ。
なんつぅ人使いの荒い女だ。もっと老人を労われよ。年寄りをこき使うなんてヒドイ女だよな。
さて、一名と言ったが、確認するまでもなく、いなかったのはアホっぽい娘だった。あれだけ五月蝿い奴がいなくなればすぐ分かる。
あの娘はどうしたんだ? ウザいからって捨ててきた訳じゃないよな。
「いや~、何と言いましょうか・・・」
おっちゃんは口を濁す。言いたくない事情があるのか?
それって、まさか・・・死んだのか? うっわ~っっ。
レイさまは今回気軽に死にそうになったって言ってるけど、マジか? マジなのか!?
オレの慌て様におっさんが否定してくる。
「死んではいないのですが・・・」
じゃあ、かなりの大ケガでも負ったのか? まさか動かせないような大ケガ?
お前らは大丈夫なのかよ? お前らもケガとかしてんじゃないのか?
おっさんたちは「あの娘も自分らも大丈夫です」と言っている。
じゃあ、死にそうになったって言ってるこの女は、どうなんだ?
一見、ケガしている様には見えない。服の上からじゃ分からないので、触って確かめてみる。
痛がってる様子はないけど、顔赤いぞ。ケガじゃないけど、調子が悪いんじゃないのか。
寝てろ、寝てろ。悪化したら面倒だろ。
殺しても死なないような馬鹿兵士を連れて行けばよかったのに。あいつなら肉壁にしても平気な気がする。
安静にしてろって言ったのに、レイさまは素直に寝ない。ああでもないこうでもない、と考え込んでいる。
オレなら喜んでゴロゴロするんだが、ワーカーホリックってやつか?
何か思いついたのか、いきなり近隣情勢の意見を求めてきたぞ? 「最近の情勢でこの身はどうかしら」って、そんなの知るか!?
言った後、オレに問いかけても建設的な意見が聞けないと気づいたのか口を閉ざした。
あくる日、レイさまから色々な質問が書かれた書類を渡された。
何? この詰問状? あるいは身辺調査用紙か?
どんな生活を求めるのかとか、女性に求めることとか、一体何の意図だ?
渡されたときに「誤解答ください」って言われたけれど、それって正直に書くなって事だろ。
分かってんだろ? ちゃんと建前だってことを踏まえて書けよ、この野郎。ってことなのか。
もしかして、この女は自分を褒める文章を考えろって事か? なんて傲慢で嫌な奴なんだ。
本人が見るのが分かっているのに、悪口雑言なんて書けるはずもない。馬鹿正直に書いたら、ぶちギレるんじゃないのか?
ここは本心をそっと秘めて当たり障りのない言葉を並べておこう。
単に、世間一般では夫とは寛大な心で妻に接するものらしいって聞いたことあるから、それに準じてるだけだ。レイさまが怖いからではないからなっ。
ーーいや、ここで弱気になってどうする!? ここは屈するべきところじゃないぞ!
あの女を褒める虚言を書くのは百歩譲って我慢するとしても、最近のオレって働き過ぎじゃね? 生活の改善を切に求める。
もっとダラダラしたい。もっと昼まで眠りたい。これは譲れない。表現をオブラートにつつみつつも、きちんと明記させてもらおう。
正論ばっかり言って表面を取り繕ってるけど、本音はあの女だってたまにはサボりたいはず。




