お嬢さまの話
私は侍女として、この土地を治める領主様のご長女に仕えています。まあ、仕えるといっても厳しい上下関係ではなく、年の離れたお姉さんと妹の様な関係です。・・・いえ、そんなに実際年は離れていないですよ。気分的なものです。まだ私は若いです。
さて、そのお嬢さまですが、危なっかしい娘です。思い込みが激しく物事に突貫することがもあります。見栄っ張りでもあり、昔から弟殿に良いところを見せようと頑張っています。
性根は少々、お馬鹿というか、・・・ いえ、勉強はできるのですが、それとは方向の違う面で思慮が足りないことが間々あります。
勉強は出来ますが、腹芸は無理です。良くも悪くも真っ直ぐな気性なので駆け引きには向きません。ぶっちゃけ、交渉事は無理なのでは? そちらはむしろ弟殿の方が適性があるでしょう。
お嬢さまは真面目で真っ直ぐな気性ですが、悪く言えば、融通が利かない偏屈とも言えます。
私のからかいに気づかず、よく騙されています。生真面目なので、他人に騙されないか心配です。
いえ、私が騙す分には問題ないはずです。お嬢さまの成長のために心を鬼にしてからかっているだけですから。決して面白がってなんていません。
そして、お嬢さまは綺麗と云える容姿を持っています。顔つきは可愛いというより、美人です。きりっとした目元で、まだ幼さが残りますが、あと数年すれば誰もが振り返るクール美人になるでしょう。
ですが、お嬢さまはその見た目が不満のようです。
「可愛い方が強いでしょ?」
お嬢さまの思考は時々解析不明です。とちらかというと、むしろ可愛らしいモノは弱いのでは?
だから?というか、お嬢さまは小さくて可愛いモノが大好きです。似合わないと隠しているようですが、身近にいる者にはバレバレです。
子猫や仔犬をゆるゆるな笑顔で癒されている光景を時々見かけます。