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ぶちのめしますわよ、旦那様【領主を継いだので好き勝手やてみたい別冊?】   作者: 堀江ヒロ
領主夫婦と愉快な仲間たち

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ある阿呆を憐れむ娘の話


 お店での仕事がひと段落した私は幼馴染みの男の子(下僕)に店番を任せ、屋敷へ食事に来た。すると、しばらく姿を見なかったダメ侍女が屋敷の女の子たちに囲まれてご飯を食べていた。


 何でここにこの娘がいるの?

 奥様と隣領地に盗賊を討伐しに出かけたけれど、帰ってこなかった娘だ。奥様も彼女の行方について口を濁していたし、てっきり死んだんだと思ってた。

 この娘がいなくなっていたけれど、てもみんなの仕事に全く支障がなかった。むしろ失敗をフォローする必要がなくなったぶんだけ勤めが楽でスムーズになったくらいだ。

 出来そこないで常に侍女長に折檻されているようなアホな侍女だったので。

 ケガをしている様子もなさそうだしピンピンしている。むしろ元気すぎてウザい。

 何故かこのアホ娘の身を心配をしていたという娘たちとご飯を食べながら喋っている。

 行儀よく食べなさいよ。

 お喋りに熱中して手元が注意散漫なっているため、食べカスが飛び散っている。

 さっきからバクバク食べているけど、それ誰の分よ? 私の分じゃないでしょうね。

 当然、今までいなかった人間の分の食事なんか用意していない。

「え~~っ。そんな細かいこと言わなくてもイイでしょ。しばらく領主様のご飯食べてなかったんだから、あたしにも食べさせてよ」

 細かくないわよ。っていうか、アンタすでにガッツリ食べてるでしょ。

 ここにいない・・・アイツ(下僕)の分じゃないの?

 なお、その下僕とはちゃんと交代で休憩をとってるので、仕事を押し付け酷使しているのではないからね。


 アンタ、今まで何やってたのよ?

「あたし、結婚したんだよ。もう人妻だからね。スゴイでしょ。お子様なキミたちには分からないかもしれないけど、奥さんて大変なんだからね」

 アホな事を偉そうに言う。こんなのを嫁にするなんてどんな物好き男いるの?

「聞いて驚け! なんと、あたしの旦那は隣の領主なんだよ。あたしだって向こうだと偉いんだからね。さあさあ、あたしを敬え」

 前から馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど、とうとう妄想と現実がごっちゃになっちゃったのね。

 アンタなんかが領主のお嫁さんになれるなら私は王妃になれるわよ。


 あまりに騒いでいたためか、別室で職務に励んでいたであろう奥様が顔を出した。そして誇大妄想娘を見た途端、天を仰いだ。

 自分の中で葛藤があったのか、胸に手を置いて深呼吸した。そして怒りの叫びを叩きつける。

「何なんですの? 貴女は」

 奥様の疑問はもっともだ。いきなり戻ってきて、隣の領主夫人になったなんてアホな妄言を垂れ流している。アタマ、大丈夫?

 しかし、この娘は奥様の様子に何故か気づかないのかスルーしている。

「奥様~。手を貸して」

 奥様の表情を良く見なさいよ。こんだけ怒られてるのに全く気にすることないなんて、どんだけ厚顔無恥なのよ。


 あっ、頭を掴まれて引きずられて行った。 ーーご愁傷様。


 そらからもアホ娘は十日と開けずに、屋敷に食事をたかりに来る。その度に奥様に引っ張られて部屋に籠っている。

 きっと説教されているに違いない。

 でも、普段は一体何やってるんだろう? この娘。

 私も受け持っている仕事があるのでずっとは見てないけど、説教を夕暮れまでかまされた後、どっかへ帰って行くらしい。



 アホ娘が来るのが日課になってきた頃、私の方というと携わっていた仕事は忙しさのピークも過ぎ、まったりとした生活になってしまっている。

 農地整理や税制改革も方針は固まり、現在は別の担当者による領地内へ浸透させる実務ベースに移っているからだ。

 今は有能さより現場の頭数がモノを言う段階だ。農村で指導するなんて有象無象でもOKだから、私の手を離れつつある。

 税制改正も内容が決まって、後は実施時期を待つばかり。

 商店の業務だってボンクラな幼馴染みだけで足りてしまう。



 手の空いた私は奥様のお供で隣領の領主の館へ向かう。残念ながら店番を屋敷で手の空いていた侍女に頼んだのでボンクラも一緒だ。

 こっちの方が私たちが住んでいた屋敷より大きい。うちの領主様より確実にお金持ってるよね。

 ここの領主夫人は衛兵の鍛錬でお出掛けしているとかで不在だった。対応してくれたのはおじさんだ。

 今回わざわざ出向いてきたのはこことウチの領地同士で業務提携というか、奥様と人材や統治形態を協力し合うことになったからだ。

 お客様である奥様が何故か指示を出してるし、そのまま乗っ取っちゃう勢いじゃないの?

 私と下僕はウチで決めた税制をこっちでも流用するとかで意見を聞かれた。

 配られた資料って重要書類じゃないの? イイの?気軽に見せちゃって。

 扱う金額が桁違いだ。やっぱり店がいっぱいある街は良いね。どっかの農業中心の田舎領地とは違う。


 偉い人と直接折衝するのは主に奥様である。けれども幾度か通うと、私たちもあっちの領主夫人の姿を見かけることもある。


「あのご婦人って、彼女(ダメ侍女)に似てないか?」

 あの阿呆娘はあんなに気品ないわよ。絶対別人に決まっている。相変わらず、アンタの目って節穴ね。


 ・・・でも言われてみると、結構似ているかもしれない。

 ああ、分かっちゃった! きっと、あのアホ娘は領主夫人の影武者なのね。偉い人は暗殺とかの危険を回避するために身代わりを用意するって聞いたことある。

 あのアホ娘は領主夫人の影武者を務めることになってたんだわ。

 役にのめり込むあまり、現実との区別がつかなくなってしまったに違いない。


 ・・・なんてカワイソウ。今度会ったら、ホンのちょっと位は優しくしてあげようかな。


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