猪突猛進
話し合いもそこそこに館を出発します。まだ、挨拶と従姉妹の娘の過剰評価しか聞いていませんわよ?
『兵は神速を尊ぶ』と言いますが、急ぎ過ぎじゃないかしら? どのように討伐するのですか。
「盗賊程度に作戦なんぞ不要だ。あやつらが何をしようと我が刀の錆にするだけだ」
つまり、行き当たりばったりなんですわね。この殿方、何も考えない阿呆、いえ脳筋、・・・無計画な方ですわ。
「ならばそちらで考えれば良かろう。そっちで頭も務めてくれ。自分は個で遊撃隊として動くので、そちらはどう動いても一向に構わん」
こちらはわたくしを含めて4人しかいませんのに。
「貴女方はお飾りに徹して、見ているだけで構わん。本来ならば自分一人で充分だったのだぞ」
何故この人、斬馬刀なんて持ってきているのかしら? 要らないでしょ。大型武器は威力があり、一見有利に見えますが、取り回し困難なので複数人に対するには不適です。
「な~に。盗賊ごとき我がひとりだけで充分だ」
彼は従姉妹の娘と談笑しています。
もう、阿呆同士つるんでいれば良いですわ。
「貴女が総大将ですわ」
盗賊のアジトまで着くと、彼は斬馬刀を振り回して突撃して行ってしまいました。その後に兵士を連れて。
一騎駆けなんて古臭い戦法のつもりでしょうか。いえ、単なる猪武者ですわね。
圧倒的な戦力差があれば有効な場合もありますが、流れ矢ひとつで崩れ落ちる危険を孕んでいます。
呆れてモノも言えません。
「はぁ~。どうしますの?」
戦略書も少しづつ学ばせているはずの従姉妹の娘に聞いてみます。
が、あろうことか、自ら突撃しようとします。余計な事をしないように、動きを阻害する服装をさせたのに意味がないじゃないの。
首根っこを引っ掴んで止めさせます。全く成長していませんわ。
「え~~っ。何それ!? 総大将って詰まんない。士気を高めるために先陣を切って敵を蹴散らすのが役割じゃないの?」
あの殿方は特殊な例ですわ。一般常識に当てはめては駄目ですわ。
その彼は斬馬刀の重量を物ともせず、盗賊を吹き飛ばしています。
このままだと、わたくしの出番ありませんわね。




