領主を継いだのでふて寝してみた
「隣領地の盗賊狩りの応援に行くことになりましたわ」
今日も今日とて朝からたたき起こされて朝食を食べていると、レイさまが唐突にのたまった。
はぁ? 何言ってんだ?この女。
「隣領地のことなんて、ここには関係ないだろ? 向こうのことは向こうの奴らに任せておけよ」
わざわざ他人の領地の仕事までするつもりか? だったら、オレに押し付けた仕事を減らしてほしいもんだ。
ここから人手を出す必要なんて全くない。そもそも、親父が嫌われてたみたいで、隣のトップとはずっと没交渉だぞ。
だが、レイさまは何だかんだと理由を述べる。
「領主様はきっと心配なんスよ。あっちの次期領主はどこかの領主様と違ってイケメンだって噂っスからね」
「違うわ! このアホ!」
見当違いも甚だしい。王都での結婚式には来てたらしいが、そいつの容姿なんて全く覚えていない。
しかも言うに事を欠いて誰がブサイクだ!? お前も舐めたことばっかり言うんじゃねぇ! 終いにゃ、不敬罪でしょっ引いてやるぞ。
そんな心配なんかしていない。
「・・・ケガなんかしたら、危ないだろ!」
訓練とかじゃなくって、本物の真剣でやり合うんだろ? 万一ケガしたら血がどばーっと出るんだよな。
下女共が包丁で手を切ったのを見るだけでも嫌なのに、正直無理だ。肉を捌くのは平気なんだけど、やっぱり顔見知りの場合は何か違うんだよ。
うぅっ、想像しただけで、胃の辺りがギュッと痛む。
けれども、この女は全く言うことを聞かない。自信満々のようだが、万が一があるってのが分からないのだろうか? ・・・誰だって予期しないことってなはあるんだよ!
更には、お気楽にメシを強請ってくる。どれだけ図太いんだよ。
翌日レイさまと数人が出かけて行ったが、見送りなんかしない。
一応、日持ちのしそうな具材でお弁当は作ってやったけど、あそこまで言われたんだから、オレはもう知らねぇ!
久しぶりに昼まで寝てやるぜ。押し付けられた仕事だってやってやらねえからな!
「領主様。寂しくてふて寝っスか?」
どっかのバカの無神経なたわごとが聞こえてきたが無視だ。五月蝿い。黙りやがれ。
部屋を閉め切って久しぶりに、心行くまでゆっくり惰眠を貪ってやる。
あれ? あの女がいないってことは、その間羽を伸ばせるんじゃね?
「奥様が不在になるって・・・チャンスよね。この機に乗じて既成事実に至ればこっちのモノよね!?
こうしちゃいられないわ! 先輩に準備させなくっちゃ!」
「って言うか、何で寝室に鍵かけてんのよ!? 先輩が入れないじゃない! 兵士のお兄さん! この戸ぶち破って」
「何という無茶振り!? いくらマイハニーのお願いでも無理っスよ」




