意見相違
「隣領地の盗賊狩りの応援に行くことになりましたわ」
朝食の時間に旦那様に報告します。
数日留守になることでしょう。連れて行くのは誰にしましょうか。
本音は連れて行きたくないけれど、彼女の同行は確定ですわね。本人に聞くことがあるかもしれませんし。
そこへ、ブスッとした表情で旦那様が水を差します。
「隣領地のことなんて、ここには関係ないだろ? 向こうのことは向こうの奴らに任せておけよ」
旦那様は今回の話は反対の様です。
「隣領と友好のためですわよ。それにこちらにとっても損な話ではありません」
今まで被害がなかったからと言って、盗賊が明日こちらに襲来しないとは断言できません。盗賊討伐は他人事ではありませんわよ。
根本的な理由についてはいくら夫婦と云えど言えません。なので、無難な建前の理由を述べます。この理由だって嘘ではありません。
不測の事態に備えて盗賊の数を減らすのはこの領地にとっても益となるはずです。
でも、旦那様のしかめっ面のままです。
その後も思いつく限りメリットを上げてみますが、いくら言っても旦那様は聞き入れてくれません。
険悪な雰囲気になりかけたのを察したのか、近くで食べていた殿方が口を挟んできます。
「領主様はきっと心配なんスよ。あっちの次期領主はどこかの領主様と違ってイケメンだって噂っスからね」
「違うわ! このアホ!」
そうなのですか? 旦那様。
愛され過ぎるて参ってしまいますわ。溺愛されるのも、時には困るものなのですわね。
されども、安心して良いですわよ。ここまで愛されて裏切るような薄情な女ではありません。
それでなくとも、不貞な行為をするつもりはありません。
尻軽女に見えますの!? わたくしの事を信じていないってことですか?
「・・・ケガなんかしたら、危ないだろ!」
旦那様はそう言い捨てて、恥ずかしげにそっぽを向きました。もしかして照れていただけ?
わたくしの身を案じていたのですわね。けれども、心配はご無用ですわよ。
これでも、武門の家に生まれた者として盗賊程度に遅れはとりません。
傷ひとつなく、帰ってきますわよ。それでも、心配と言うのなら・・・
「そうですわね。無事に帰ったら旦那様の一番の自慢料理を作ってくださいね」




