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ぶちのめしますわよ、旦那様【領主を継いだので好き勝手やてみたい別冊?】   作者: 堀江ヒロ
領主夫婦と愉快な仲間たち

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お姫さまの日


「羨ましいな」

 スィがぽつりとつぶやきました。どうやら、自分では気づいていないようです。

 彼女の視線の先を辿ると、可愛い身なりをした従姉妹の娘がいました。買い出しにでも出かける様です。


 彼女は実家からの要請で花嫁修させています。家事を仕込んでいる途中ですが、その成長の程は惨憺たる・・・いえ、ちょっとだけ時間がかかっているだけですわよね。

 本人はもっと動きやすい男の子の様な服装を好んでいるのですが、とある事情で正体を隠すために女性らしさを前面に押し出した魅力的な恰好(だけ)をさせています。


 スィは従姉妹の娘の艶やかな服装に目を奪われているのでしょう。

 服だけでなく髪も綺麗に整えられて中身を知らなければ、どこぞのお姫様といっても通用するでしょう。

 わたくしには分かりませんが、普通の女の子はあんな風な綺麗な恰好に憧れるのでしょう。

 いえ、わたくしも結婚したとは言え、まだ二十歳前の女の子ですわよ。言っておきますが、女の子は幾つになっても女の子です!

 そう! 仮に、例えばですが、三十路を越えてたとしても女の子なのです!!


 何が言いたいのかと言うと、・・・何だったかしら?

 スィが彼女を羨ましがっているようです。

 良く考えたら、新入りの女の子を訳も分からず優遇している様に見えるのではないかしら?

 羨みは容易く妬みに染まってしまうものです。



 思い立ったが吉日ですわ。

 輿入れの時に押し付けられた過分な衣類はまだ袖を通していない物が沢山あります。スィにも可愛らしい服を着させてあげましょう。

 礼儀作法の勉強をしても使う機会が全くなのでは寂しいでしょう。


「・・・あの、奥様?」

 綺麗な服を着ておしゃれをさせても、彼女の表情の曇りが晴れません。むしろ、憂いが深まってしまったようです。

 遠慮深い娘ですわね。きっと自分一人だけ良い目を見るのは気が咎めてしまうに違いありません。

 なんて、心の優しい娘でしょう。どこかの誰かに爪の垢でも煎じて飲ませたいものです。


 予想通り、スィの艶やか姿は見た他の女の子たちの羨望の的となってしまいました。口々に自分もドレスアップしたいと言ってきます。

 屋敷の女の子はそれぞれ一回づつ体験した後もまたやりたいと言ってきます。

 きりが無いですわね。

 では、こうしましょう。一番頑張った娘にご褒美として一日だけお姫さまの様に歓待してあげることにしましょう。



 頑張った女の子に屋敷でお姫さま体験をさせることが恒例行事になりました。お姫さまといってもわたくしの嫁入りの際に持ってきて持て余した豪華な服を着せて、旦那様の手作りお菓子でお茶会をするだけです。

 お姫さまの様な見た目麗しい格好が出来て女の子も嬉しいし、わたくしも可愛い女の子を愛でれて嬉しいですわ。

 タンスの肥やしになっている大量の不要在庫も利用できます。

 様々なサイズの女の子がいますが、布地をカットすることなく帯で留めて丈を詰めれば対応可能です。


 ひとつだけ予想外だったのは、ある女の子の有能さでした。

 3回連続で、特定の女の子がお姫さまの権利を独占してしまいました。

 彼女を無視して他の娘を選べば良いのでしょうが、明らかに功績が出ているのに他の娘を選ぶのも、その娘に悪いですわ。

 けれども、今の基準ですと、ずっとその娘ばかりになってしまいます。


 止むに止まれぬ苦し紛れの方便として殿堂入りということで、彼女を選定対象から外します。

「え~、せっかくあたし頑張ったのに」

 その代わり、どれでも好きな服を進呈しますわよ。

「え~と。それじゃ、これを頂いていいですか?」

 この娘は目ざといので、一番豪華な服を選ぶと思っていましたが、思い違いだったようです。布地自体は良い物ですがシンプルなデザインの物を選びました。

 可愛らしいところもありますわね。


 えっ? 男の子はどうするって? そんなの旦那様が考えれば宜しいでしょ。






◇◇お姫さまの日(プリンセスデー)◇◇

 正式には『女性の自由および男女平等そして女性の地位向上のための記念日』

 長いので通称『お姫さまの日(男が虐げられる日)』と呼ばれている。

 この日は世の男性達が自主的(強制的)に妻や恋人,母親に娘など身近な女性をまるでお姫さまのように大切に扱ってくれるという素晴らしい日である。その日は各地のテーマパークで女性の入園料が半額となり、女性のためのイベントが多く開催されている。

 本来は初の婦人参政権が認められた日を記念した日である。

 しかしながら、女性の社会進出に尽力した過去の有名な女性為政者がお茶会を開催していた日としての方が世間に浸透している。

 その為政者は周辺各地で活躍目覚ましい女性をお茶で歓待し、その功績を称えていた。身分の上下なく自分の屋敷に招き、その際自ら選んだ衣装一式をプレゼントしていたといわれている。

 その女性たちの様子がまるでお姫さまの様だったことからこの日の習慣が生まれたとされている。

 彼女のおかげで男性の陰に隠れていた有能な女性が表舞台に現れるようになり、彼女の元には有名な人材が集まったという。

 なお、『王子さまの日』なる記念日は残念ながら存在しない。



 この世界だけの架空の記念日です。念のため。


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