領主を継いだので仕事ぶりを見せつけてみた
最近、あの女がオレを疑っている気がする。何か、前にも増してオレを観察されてる気がするぞ。
ちょっとは仕事してるんだぞってところも見せないと、ヤバくないか?
ずっと一緒にいる女が口煩い第二のおばちゃんみたくなるのはゴメンだ。だが、残念なことに、ああ云う風になりそうな予感がヒシヒシする。
どうすれば良いのか? 屋敷の下僕どもにお菓子を配って、オレを褒めるように脅迫しとくか? オレの温めていた新作レシピが火を噴くぜ!
・・・いや、ちょっと待て。一緒に暮らしている奴らに命令しておくと、後でボロが出るかもしれない。
お菓子を作り終わってから、重要な事に思い至ってしまった。
ここはレイさまと接点のない人間を選ぶべきだろう。
ふぅ~、危ない。作戦前に気づいて良かったぜ。ふむ。要らなくなったお菓子はそこいらの奴らに始末させとこう。
隣村の農家のオヤジどもなら如何だろうか? あいつらなら実験農場で栽培している利益率の高い作物の種を恵んでやっているから、言う事を聞かせやすいだろう。
あの女を上手い事、その畑に連れ出してオヤジたちにオレに好意的な意見を吹聴してもらおう。
おっと、賄賂も渡しておこう。味覚に鈍いオヤジどもは適当な料理で充分だろう。
「こんな旨い酒の肴をもらっちゃ、断れないな」
「おいおい、こんなの貰わなくてもちゃんとイイ所を言ってやるぞ」
「嫁さんが怖いのはどこの家庭もだろ」
「お前んとこは特にそうだろ」
「わはははは」とオヤジどもは馬鹿笑いする。
バカな奴らめ。廃棄予定の内臓の煮込みで喜びやがって。安上がな連中だ。
数日後、視察とだまくらかしてレイさまを連れ出す。作戦通り、まんまと連れ出された。
ついつい、期待に待ちきれずに早起きしてしまったので弁当を作ってしまった。彼女は不敵な笑みを浮かべているが、笑っていられるのも今のウチだけだぜ。
事前の打ち合わせ通り、オヤジどもの畑に着く。何気ない風を装って、領民どもの陳情を聞いてやろうと、レイさまをオヤジの目の前で促す。
「ちょっとお時間宜しいかしら?」
ーー彼女は話しかけた。オヤジの隣の人間へと・・・
何で、そのオバチャンに話しかけるんだ!!
せっかく用意してたオヤジに何故話しかけないんだよ!?
スタンバイしてもらってたのに。ヒドイ。
「坊ちゃんはお母さん子でね~、先代の奥さまの後ろをずっとついて回ってたんだよ。お料理も奥さまに食べさせたくて始めてね~。あの頃はこんなに小っちゃくて」
オバチャンは気にせず、何故か・・・誰かの幼い頃の話を始める。
「嫁さんに良いとこ見せようとしたのに残念だったな」
慰めるようにオレの肩を叩くオヤジ。
だったら、あのオバチャンを止めてくれ。オレの恥ずかしい情報がダダ漏れだ。
「わははははは。無理に決まってるだろ」
いつ終わるんだ? ・・・もう死にたい。
苦行の時間は小一時間だった。何故こんな羞恥プレイをする必要があったのか?
いや、無かったはずだ。
その後、件のオバチャンから遠く離れた場所に陣取って弁当を食べる。
くそ~。ニヤニヤ笑みを浮かべるレイさまがうっとおしい。ガキの頃の忘れたい失敗談も白日の下にさらされたし、明らかに見下されてるよな。
イカン! 誠に遺憾だ。何とか挽回する策は?
そうだ! 『後家殺し』があるじゃないか。作った時は失敗作だと思ったが、農業担当の奴が改良して結構使えるようになったらしいじゃないか。
あれを見せれば、ちょっとは見直すんじゃね?




