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ぶちのめしますわよ、旦那様【領主を継いだので好き勝手やてみたい別冊?】   作者: 堀江ヒロ
領主夫婦と愉快な仲間たち

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領主を継いだので新婚生活を見直してみた


 おばちゃんに追い出された後、仕方なく厨房に向かう。気分を切り替えて考える。

 メニューは何にするかなぁ。

 時間があるから、手の込んだモノにするか。いや、面倒だしスープで良いか。


 昔拾って来たガキどもは結構大きくなったので、女は今では下女としてこき使ってやっている。男は基本兵士見習いだ。

 もちろん例外もいて、今は王都にいる家令の代わりや畑の世話をさせている奴なんかもいる。

 今はオレかおばちゃんが指示しているが、ゆくゆくはオレが何もしないでも、勝手に働いてくれるようになるのが理想だ。


 みんな料理の基礎はマスターしているので皮を剥くくらいは余裕でできるが、応用編で野菜の飾り切りでもやらせてみる。

 不格好でも綺麗に切れても気にしない。最終的にドロドロになるまで煮込んでしまえば一緒だ。

 失敗しても、それは織り込み済みだから問題ない。が、ひとりの下女はウザいほどしょげている。

 一番最初に拾って来たうちの一人だ。こいつはある程度までは上手くなるのだが、それ以上はイマイチ上達しない。一番長くいるくせに何をやらせても不も無く可も無い微妙な実力だ。

 後から来た奴に抜かれてんじゃないか。特にドヤ顔で煩いガキが一人るが、めきめきと頭角を現している。こっちは別のウザさがあるが実力はある奴だ。

 雰囲気を悪くするのも嫌なので、「気にするな」と頭を撫でてやる。


 一方で、オレは嫌なこと(おばちゃんの仕打ち)を忘れるように小麦粉をこねる。一心不乱に捏ねる。揉みしだく。そして渾身の力を込めて打つ。叩く。

 ふぅ~。 一息つく。

 力一杯小麦粉を捏ねるのは窮屈な生活で溜まっていたストレスの解消にもってこいだ。オレには日々の圧し掛かる重圧がかかっているのだ。


 部屋でゴロゴロしているとおばちゃんのみならず、レイさまが様子を見に来る。生活自体は変わらないが、監視者が二人に増えてる。

 とっさに書類を見て仕事をするフリも、その内バレるんじゃないのか? いや、もうすでにバレていて、泳がされている可能性も否定できない。


 安住の地は屋敷にないのか? 翌日は仕方なく視察と云う名目の元、外へ逃げ出す。外なら監視の目も無いだろう。

 近所の奴らがおばちゃんに告げ口する懸念はあるが、そこまで心配すると何処へも行けない。

 暇しているアホ兵士をからかうために街へ向かう。詰所でボーっと立っているそいつを見つけると、向こうから話しかけていた。

「領主様って浮気とかしたくないっスか?」

 こいつ、藪から棒に何言ってんだ? 一応、仮にも新婚だぞ。

「いや~、その権力者って妻の他に愛人をいっぱい囲っているイメージ有るじゃないっスか。そこんトコロどう考えているっスか? コッソリ教えて欲しいっス」

 あんなのがもう一人増えるのか? 嫌だぞ。

「別のタイプならどうっスか。おとなしめの女の子とかなら良いんじゃないっスかね。愛人がダメなら第二夫人とか、側室とか欲しいっスよね。欲しがらないと困るっス」

 どれも同じだろ? いらねーよ。誰が困るってんだ? 下らない事言うなよ。

「下らなくないっス。『欲しい』以外の言葉はいらないっス」

 お前の同僚が変な目で見てるぞ。って、今、屋敷の下女が通ったぞ。すっごい目で見てなかったか? 嫌な勘違いしてないか。

「話をそらそうたって、そうはいかないっスよ! 俺にも事情があるっス。本心を教えて欲しいっス」

 何いきなりキレてんの?

 まさか、レイさまから聞き出せって言われてんのか? 恐ろしい女だ。さては、欲しいって言ったら、ぶちのめされるってことになるんだな。


「それとも、あの美人な奥様とイチャつくだけで充分っスか? 毎晩お楽しみなんスね! ・・・死ねばイイのに」

 お前が死ねや。っていうか、毎晩お楽しみって何だよ?

「もう、分かってるくせに。領主様って見かけどおり下品っスね」

 下品なのはお前だ。さっきから、すごいナメた口きいてるけど、オレは仮にも上司だからな。一度敬意って言葉をよく噛みしめろ。

 それと一応言っとくけど、お前が考えていることは、まだ無いからな。

「またまた~照れちゃて。 ・・・えっ? マジっスか? 何でっスか。もしかして、領主様ってもしかして不能っスか?」

 口調を改める気はないようだ。驚いたように聞き返してくるが、無いモノは無い。

 そもそも、そういうのってどうやって誘うんだよ? 一緒の部屋で寝ていれば自然とそうなるもんなのか? ついでに言っとくけど、不能じゃないからな。


 本来なら、夫婦の寝室ってことで大きめの部屋に二人で住むはずだったんだけど、実際寝泊まりしているのはオレはひとりだ。

 レイさまは結婚式の用意に使った仮の部屋をそのまま使っている。

 気恥ずかしかくて、部屋を移って来いと言い出せないまま今に至っている。

 向こうから言ってくれないかなぁ、と思うのだが、今のところその気配は全くない。

 ちょっと前におばちゃんにそれとなく遠まわしに相談してみたら、鼻で笑われたし。


「ならば、数々の女性相手に散々浮名を流した俺が、口説き方を教えてあげるっスか?」

「へぇ~。浮名を流したんですか? 知らなかったです」

 そう口を挟んできたのは、さっき通りかかった下女だ。戻ってきたのか?

「うげっ!? 何でここに? いや、これはいつもの冗談っスよ」

「ふ~ん。そうですか。まあ、わたしには全く、これっぽちも関係ないですからいいですけど!」

 いや、どう考えても関係あるだろ。二人で仲良く喋ってるのを時々見るぞ。

 何故かいきなり弁解しだしたアホを袖にし「触らないでください」とそっぽを向く。そしてアホを視界に入れないようにしつつ、こっちを向く。

 この女、微笑んでるけど、目はめっちゃ怖いぞ?

「聞くつもりはなかったのですが、お話は漏れ聞いてしまいましたっ!」

 漏れ聞くって、そんな大声でしゃべってないぞ。だが、女は俺のツッコミをスルーし、構わず言葉を続ける。

「そんな奥手でお困りな領主様に朗報です! どうでしょう? 自信をつけるために身近な女の子でれん・・・ムグッ?」 

「ちょっとだけ、そのお口を閉じておくっスよ!」

「何なんだ? その女?」

「ちょっと頭をやられているだけだから大丈夫っス」

 それ、全然大丈夫じゃないだろ?

「いや、この娘は俺が責任を持って引き取るっスから、領主様は気にしなくていいっス。この話はまた今度でいいっスね。この娘を送ってくるっス。 --それじゃ!」

 暴れる下女を小脇に抱えてダッシュで去っていく。小脇に抱え直したため、口をふさいだ手が離された途端、訳の分からない事を叫ぶ。

「先輩の既成事実のチャンスが~~!」


 あの女何だったんだ?

 う~ん。流石はアホ兵士の関係者。イカれてるな。きっと、類は友を呼ぶって奴だな。


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