凡人
弟と一緒に学問を学ぶこととなりました。話を聞いたお爺様が教師役として名乗りを上げてくださりました。
語学、算術などの一般教養を始めとして法学や領地経営学などを学んでいます。
覚えなければならないことは沢山ありますが、わたくしはどうやら物覚えが良くないようです。
弟は雨水が砂にしみ込むようにすぐさま覚えてしまいます。けれど、わたくしは習得に時間がかかっています。お姉さんとして頑張ると決めたというのに、実の弟に対して不甲斐なさすぎます。駄目駄目な姉です。
必死に机に噛り付き書物を読み込みます。傍で見ている弟も、さぞかし失望したことでしょう。
そう云えば、武術の練習も同年代の男の子に比べて上達が遅いです。男女差があるのは判っていますけれど、子供の頃はそれは度変わらないはずです。
お爺様やお父様たちはそんなことはない、と言いますが、自分に才能はないのは明らかです。お父様やお兄様は立派な人と凡人であるわたくしとはつくりが違うのかもしれません。
誠に遺憾ではあるけれど、自分の力不足を認めなければなりません。
ーーさて、腐っていても仕方ありません。才能のない自分は出来ること、愚直に基礎を繰り返すしかありません。
でも、お嫁に行くまでに貴族として誇れる最低限は習得しなければなりません。
上達が遅いならば練習量でカバーです。しかし、どれもある程度までしか取得できませんでした。
お爺様だけでなく、他の方にも師事しましたが、全てを学び取ることはできませんでした。
成人した今でも学問は続けていますが、もはや意地と惰性です。
剣についても、下手の横好きかもしれません。それでも、長く続けていれば上達するものです。今では何とか、それなりの腕になってきました。
凡人でも、努力を積み重ねれば何とかなるものです。
今日も、剣を振り精神統一をはかります。
明日から本番、領地経営の補助を始めます。貴族の令嬢として恥ずかしくない成果を見せられるよう頑張ります。
初心を忘れ去った女の子