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ぶちのめしますわよ、旦那様【領主を継いだので好き勝手やてみたい別冊?】   作者: 堀江ヒロ
領主夫婦と愉快な仲間たち

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従姉妹の女の子


 旦那様が拾った生き倒れの女の子が目を覚ました様です。

「仕方ないから、様子を見行くか」

 旦那様が、そう言って女の子の寝ている部屋に行こうとするので、慌てて止めます。

 起きたばかりの顔で殿方の前に出れる格好ではないでしょう。女性の寝起きを見るなんてはしたないですわよ。

「えっ? でも、拾う時に見てるし、今さらじゃね?」

 旦那様はデリカシーというモノの意味を一度調べた方が良いですわね。


 わたくしが女の子の様子を見に訪れると、慌てて起き上がります。でも、彼女ははまだ顔色が優れていません。

「どうかしましたの? まだ体調が悪いのではなくって?」

 運ばれたときにも思いましたが、この娘ってやっぱり小父様の所(従姉妹)の娘ですわよね。しばらく前に家出したって聞いていたけれど、何でここにいるのかしら。

 もう少し見つけるのが早ければ、小父様と会えましたけれど、どうしましょう。

 そもそも、何でこの娘は家出なんてしたのでしょう? そこに触れて良いのかしら。・・・それとも、そっとしておいた方が良いのかしら?


 こんな事なら家出の経緯を聞いておけば良かったわすわね。家出までしたのだから、重い事情を抱えているのかもしれませんし、直接は聞けませんわね。

 遠まわしに事情を聞いてみますが、慎重すぎた質問では要領を得ません。


「え~と。貴族のお嬢さまなのにお付きの人はいないのかなぁ~、なんて・・・」

「さっきの娘がそうですわよ? あの娘、粗相でもしたかしら? ごめんなさいね」

 スィが変な事をするとは思いませんが、目が覚めたばかりで気が立っているのでしょうか。悪い体調は精神もむしばみます。些細な事でも癇に障るのかもしれません。

 そこまで考えて、ハッと気づきます。

 もしかして侍女をしていた義姉に会いたかったのでは! でも何かしらの重い事情を抱えていて口にできないのではないかしら?

 やっぱり家族は大事ですわよね。

 早速、実家に手紙を書きましょう!! 彼女のことを一刻も早く伝えなければ。

「ゆっくり養生すると良いですわ」

 安心して待っていると良いですわ。



◇◇◇◇◇

 --数日後、実家へと送った手紙に元侍女の書いた返事が返ってきました。

 書かれている内容は、わたくしが思っていたのとは全く別のことでした。

 要約するとーー彼女はこの屋敷で匿って、ついでに花嫁修業でもさせておいて下さい。あと、くれぐれも、領地外へ出さないで下さい。


 ・・・どう言う事でしょう?


 ーー更に数日後、隣領地から凶悪犯の手配書が回ってきました。

『連続暴行・強盗犯。かなり凶悪で捕縛に向かった兵士に襲い掛かって逃亡中。目下捜索中だが、現在のところ足取リ不明。少年だが、女装している可能性有。貴領地に逃げ込んだ恐れがあるため、注意されたし。目撃情報があれば情報乞う。検挙に際して生死を問わず』


 これに添付されている犯罪者の特徴って・・・、いえ、まさか、違いますわよね? 少年って書いてありますし・・・

  ・

  ・

  ・

 イエイエ!? 自分でもそんな誤魔化し、納得出来ませんわよ。

「あの娘、一体何をやらかしたんですの!?」

 ふと、外へ向くとちょうど侍女長に首根っこを掴まれ引きずられている女の子が目に入る。

 どう考えても、あの娘ですわよね。時期的にも合致しますし・・・


 もう一度、罪状を確認します。

「本当に、何をやらかしたんですの!?」

 我慢できず、もう一度叫んでしまいました。手紙の返事って、これを踏まえてのこと!?

 頭痛くなってきましたわ。

「奥様、どうかしましたか!?」

 スィがわたくしの絶叫を聞きつけ、駆け付けてくれました。

「何でもありませんわ」

 心配してくれる可愛い子を見るとーー嗚呼、癒やされますわ。何処かの阿呆な娘にも、この優しさを見倣わせたいですわね。

 さて、腐っていても、仕方がありません。どうやって、あの娘を引き渡すべきか。本人は素直に話し合いに応じるでしょうか? 自首を拒否するようなら、最悪強引にふん縛るしかないですわね。

 為政者として、犯罪者を目の前にして見て見ぬ振りは出来ません。

 暫くわたくしは考え込んでいましたが、スィは部屋を出ていこうとしません。

「お悩み中のところ、申し訳ありません。奥様のご実家から至急のお手紙が届いています」

 そう言って、書状をおずおずと差し出します。

 確実に、あの娘の事でしょう。あの娘の家でも沙汰について一言あるでしょう。早速中身を確認します。

  ・

  ・

  ・

 たった一度の失敗で、その後の人生を閉ざしてしまうのは可哀想ですわね。年長者として、彼女にやり直すチャンスを与えるべきですわ。

 うん。それに、遠縁とはいえ、親族を大事にするのは人間の心情として仕方がない事ですわよね。

「・・・・はぁ~~~」

 スィを更に心配させるのは本意ではありませんが、ため息が漏れてしまうのはやむを得ない事でしょう。

「スィ、悪いのだけれど、侍女長に首根っこを掴まれていた娘を呼んできてくれないかしら」


 スィが出ていったのを確認して、手紙を力の限り引き裂きました! いえ、中身は何て事の無い書状ですわよ。

 でも、これは切り刻んだ後、徹底的に灰になるまで、確実に燃やし尽くさないと。ーー要らなくなったゴミを自分で片付けるだけで、全く他意はありません。



 件の彼女は致し方ないので、髪型も変えさせて、女性らしい服装に整えてみました。

 輿入れの時に持ってきた令嬢っぽい服が余っていて良かったですわ。これで手配書に描かれている特徴は大分打ち消せてます。

 ーーうん。もう、別人ですわよね。

 中身は兎も角、見た目は良いところのお嬢さまですわ。まあ、家柄を考えれば本当にお嬢様なのだけれど、本人はそれを全く感じさせませんわね。



さて、前話で何処かの娘が『レイさまに模擬戦を挑むと、ボコボコにされます』と書きましたが、ただ真剣に鍛練に取り組んだ結果であって八つ当たりでは絶対ありません。

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