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ぶちのめしますわよ、旦那様【領主を継いだので好き勝手やてみたい別冊?】   作者: 堀江ヒロ
領主夫婦と愉快な仲間たち

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ある正体を隠した娘の話


 気がつくと、見知らぬ天井だ。慌てて身体を起すと、毛布がぱさりと落ちた。自分にかけてあった物らしい。

「ここ、どこ!?」

「あっ、起きました? ちょっと待って下さいね」

 見知らぬ女の子があたしの叫び声にドアから顔を出して、すぐまた引っ込んでしまった。


 あれ? ここってどこだろう?


 戻ってきたとき、その女の子の手にはスープの入った皿。

「何か口にできますか? 無理なら、何か飲み物だけでも」

 全然無理じゃない。むしろ腹ペコだ。ウェルカムだ。どんと来い。

 見知らぬ女の子がスープを渡してくれる。白い穀物と何かの草が入ったものだ。口にしてみると、シンプルな塩味のみ。

 シンプルだけど、何も食べていなかった胃に優しく染み渡る。

 あ~~~。美味しい。でも、肉が食べたい!

 全て飲み干してから女の子にお礼と共にそう言うと、苦笑いされた。

「その様子なら大丈夫な様ですね」

 水もがぶ飲みして一息つく。

「肉はまた今度。今はゆっくり体を休めてくださいね」


 これから、どうしよう? あの子を見る限り、敵意はなさそうだけど油断は禁物だ。

 聞くところによると、あの癒着した兵士のいた領地とは別の領主が治めている街らしい。所属が違えば、越境してまで追ってこないと思うけどどうだろう?

 今のあたしは残念ながら濡れ衣でお尋ね者となっている。事実は正義の味方なのだが、悔しいこと、この上ない。

 腕をぐるっと回してみる。まだ身体はだるい。見える範囲にあたしの荷物は無い。


 まあ、成るようにしか成らない。若くして悟りをひらいていると、ノックの音がした。

 さっきの子かな?

 あたしより少しだけ年上の綺麗な女性。といっても、まだ若い。二十歳には届いていないだろう。


 何か、見覚えがあるような・・・


 あれ? この女の人って本家のお嬢様だよね。何でこんな田舎にいるの? へ~、こんな田舎にお嫁に来たんだ。

 まさか! お嬢様お付きをしていた姐様いるの!? 見つかったら、ヤバい。ヤバすぎるってモンじゃない。

 父様には武者修行の旅は黙認してもらっていたが、母様には反対されていた。母様と仲の良い姐様に見つかったら、説教どころじゃないよね。

 すぐにでも、姿をくらまさないとヤバい。着の身着のままだろうが、関係ない。危険度は癒着した兵士なんかの比ではない!


「どうかしましたの? まだ体調が悪いのではなくって?」

 慌てたあたしをお嬢様は訝しがってくる。

「え~と。貴族のお嬢さまなのにお付きの人はいないのかなぁ~、なんて・・・」

「さっきの娘がそうですわよ? あの娘、粗相でもしたかしら? ごめんなさいね」

 続く言葉をうわの空で聞く。

 へっ? 姐様いないの? セーフ! 良かった。命拾いした。

 でも、お嬢様でもあたしのこと気づかれたら、実家に戻されちゃうんじゃない? そしたら実家で母様に軟禁されちゃうんじゃない!?

 ヤバい。気づかれないようにしないと。

 目線を合わせないように、慎重に受け答えをする。

「ゆっくり養生すると良いですわ」

 そう言って、部屋を出て行った。入れ違いにお付きだって子が身体を拭くためのタオルを持ってきてくれた。



 正体を隠して様子を見る。お嬢様は何も言ってこない。

 あれ? もしかして気づいてない? そうだよね。分家の小娘なんか気にしてないよね。

 ーーよし、バレてない。バレてない。

 まあ、直接顔を合わせて話したのって、もう何年も前だったはずだから覚えていないのかな。だったらセーフだ。

 なぁ~んだ。あたしの杞憂か。


 あたしはこの屋敷にとりあえず、ご厄介になることにした。まあ、武者修行っていっても、具体的な目的地も無いもん。それにあの悪徳兵士たちの追撃からほとぼりを冷ます意味もある。

 身元バレしていないので、安心して剣術の訓練に混ぜてもらう。お嬢様は午前中、若い兵士たちに剣を教えながら鍛錬してる。みんな、あたしから見ればひよっこの見習いだ。

 調子に乗って、あたしの秘められた力を見せつけてやる。同年代や年下の少年を軽くひねってやる。ぽこぽこ面白いように攻撃が当たる。

 えっ? 年上の人たち? それはお嬢様が相手している。

 そういえば、もうお嬢様じゃなかったっけ。え~と、奥様は年上の男性をバッタバッタとなぎ倒してカッコいい。

 父様は全てを叩き斬るような豪快な流派だが、奥様はフェイントを織り交ぜたスピード重視の流派だ。


 剣術の訓練は楽しいのだけれど、その後に面倒なことが待っている。勉強の時間だ。あたしだって、実家にいた時に最低限の学問はこなしている。・・・けれど、最低限だったらしい。

 良いじゃない。喋れて・書けて加減計算が出来れば。ちょっとした礼儀作法だって母様にお尻を叩かれながら覚えてたしっ!

 それ以上なんて要らないじゃない! ねえ!! 使う機会なんてないしょ!

 こんな役に立たないことやってらんないわよ!

 それなのに! 逃げ出すと、おっかないおばさんに首根っこを掴まれて連れ戻される。あたしは身のこなしにもちょっとした自信があったのに、微妙な力具合で引きはがせない。

 更には、別の女の子たちに混じって針仕事や掃除もさせられる。

 ・・・せめて、料理なら覚えてあげても良いけど。


 外出には何故か、ヒラヒラした服を着せられて髪の毛もしっかり、整えさせられる。

 旅の間はボサボサにしていて、伸びた分を適当に後ろで縛っていた。でも、今は面倒に編み込みまでさせられている。

 奥様って女性を着飾る趣味があったんだ。初めて知った。

 正直煩わしいんだけど、どうしてか目が怖いから、逆らわずになすがままに任せている。


 こんな不便なところだけれど、ご飯は美味しいし、出て行くのは・・・う~ん。 もうちょっと後でも良いかな?



 そういえば、ここまでは手配はされていないっぽい。後ろ暗いんだから、越境してまで手配する勇気なんてなかったんだね。

 全然心配してなったけど~。



 訓練中に調子に乗ってレイさまに模擬戦を挑むと、ボコボコにされます。


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