ある犯罪を取り締まる兵士の話
このところ物騒な事件が続く。街道で不可思議な盗賊の被害が相次いでいる。商人を襲う被害は減ったが、何故か住所不在の自領民でない流民が襲われている。
今までは高価な商品を運搬してる商人を襲う盗賊がいたのだが、そちらは鳴りを潜めている。
自分の所の領民ではないと言っても、巡回している土地で起きた犯罪なのだから取り調べもする。
同じ人間ばかりが狙われる。金目的ではなく、怨恨のセンが濃厚か?
別件で街で物取りに襲われるという事件があったが、その被害者も混じっている。
「兵士さん。ここに盗賊が居ますよ!」
街を巡回していると、大声が聞こえたので急行した。そこには倒れている男性と悪どい笑みを浮かべている小柄な人物。
もしや、噂の物取りの犯行現場か?
なるほど。女の子と云っても通用する容姿。いやらしい目的で男を釣り上げ喰い物にする悪党。彼女・・・じゃなかった。彼が噂の連続暴行犯で間違いがないようだ。
捕まらない自信があるのか、自ら大声を上げ挑発してくる。
「そこを動くな!」
腹の底から大声を出し、気合を入れる。呼子で同僚たちへ称号の合図も送る。
同僚が集まって来るまで時間がかかるが、その間に逃がすわけにはいかない。
意を決して犯罪者へ突撃する。
予想に反してあっさり腕を捕まえられた。だが、そいつはとんちんかんな事を言いつつも余裕は崩さない。
ここから抜け出せる自信があるのだろう。
腕だけでなく、抱きしめるように羽交い絞めにし逃げられないようにする。
「五月蝿い! 神妙にしろ! この犯罪者め!」
同僚の兵士も集まってきた。これで逃がすことはないだろう。
羽交い絞めにしたまま、同僚たちの包囲を狭めていく。
いくら凶悪犯と云っても、まだ成人前の少年だろう。できれば無傷で捕えたい。これで観念してくれれば良いのだが。
が、予想に反して諦めず暴れてくる。
腕を振り回そうとしてきたので上半身に意識を持って行かれると、足の甲に鋭い痛み。踵で踏み抜かれたのだろう。とっさ的に拘束を緩めてしまう。
その隙をついて犯罪者はあっという間に反転し、足の甲以上の衝撃が股間を襲った。
・・・その後のことは覚えていない。気づいたのは詰所の休憩室だ。痛みに動くことも出来ない。
同僚はなぐさめてくれたが、あまりお見せできない所が腫れ上がって起き上がれない。
・・・屈辱で死にそうだ。
街の治安を守る兵士に反抗し、犯罪を押し通そうとする。近年まれにみる凶悪事件である。
この領地でこんな狼藉を許しておくわけにはいかない。
あの犯罪者は人相書がばらまかれ、即時指名手配の運びとなった。周辺各街、村を含めた領地全域に通達がなされる徹底ぶりた。
場合によっては、領主殿に上申して隣領にも知らせる必要があるだろう。




