ある身の危険を感じた盗賊の話
一体、何故こんなことになってしまったのか・・・ 森の中を走る。だが、足場が悪くて目標に近づけない。
偵察で少数しか連れてきていない事が災いした。
ひとりの部下が倒れ、気づいた時は既におれも腕に投擲を受けていた。投石による奇襲だ。
「いたぞっ! あそこだ!」
襲撃相手を見つけた時は既にもう一人倒されていた。その襲撃相手とはなんと小娘たった一人だ。近づいて囲んでしまえば容易く捕まえられるはずだ。
だが、現実は違った。
頭目さえいれば、こんなことにならなかっただろうに。いや、頭目が居なくても、腕が無事ならばおれでも剣で切り捨てる自信がある。
だが、姑息な小娘は木を盾に逃げながら投石してくる。近づくのは難しい。
視界が悪いこんな森の中でどうやって、命中させているのだろう?
投げナイフなどの刃物ではなく、石を投げるというのが舐めている。こっちを殺すつもりが無いのだろう。
いつでもこっちを殺せるという余裕の表れか?
正面からガチで戦えば勝てるというのに、距離が縮まらない。足の速い部下を先に行かせ、おれも後に続く。
「正々堂々正面からかかってこいや!」
森の中におれの声が空しくこだまする
先行していた2人が倒されていた。5人いたのに、今はおれ一人。小娘は不適な笑みを浮かべる。
石が命中した利き腕はまだ動かないが、やれるか?
・・・やれなかった。
この盗賊団は未曽有の危機に瀕している。それは悔しい事に一人の小娘が原因だ。
その娘はおれたちの盗賊団に前触れも無く突然敵対してきた。何処にでも現れ、神出鬼没で所在を掴ませない。一所に拠点を定住せず、なんとも得体の知れない不気味な存在だ。おれだけでなく、何人もの仲間が小娘の襲撃で被害を受けている。
件の小娘の戦闘能力的はそれなりに強いが、倒せないほどでもない。
だが、部下が街で情報収集をすれば問答無用で襲われる。しかも、姑息なことにそいつが狙うのは下っ端ばかり。
ある程度の強さを持つ相手には奇襲・遠距離攻撃のコンボで襲ってくる。
根負けして狩場を変えて移動しても、その先々に現れ襲ってくる。どうやっておれたちの情報を仕入れてきたのだろう?
・・・全く、なんという疫病神だろう。
「おいっ! どうした!?」
身ぐるみはがされ途方に暮れているおれたちを囲んだのは武装した男たち。
巡回兵士か?
「盗賊に襲われたんだな! どんな奴だった? 人数は?」
被害者として事情聴取を受ける。何たる屈辱!? 小娘一人にやられたと言えるはずもない。
頭目もこのところずっと不機嫌だ。
代わりに高価な衣類を運搬しているという少数の護衛しか連れていない馬鹿な貴族の一行の情報を仕入れたので上げてみる。
これで帳消しに・・・ならないだろうなぁ。
小娘を引っさらってこないと、おれの首が飛ぶ。比喩ではなく、物理的な意味で。




