ある狙いを察した男の話
巡回していた兵士が男性が倒れているのを発見した。その男性は街の住民ではないが、度々この街に訪れていたらしい。
男性は気がつくと興奮して何事かわめいていたが、事情を聞こうとすると口を閉ざしてしまった。
重ねて聞くと「何でも無い」と逃げるように立ち去った。
当初、単発の物取りかチンピラ同士のいさかいだと思われていた。しかし、隣の街でも同様の事件が発生し同一人物による連続犯行のセンが濃厚となった。
被害関係者は口を重くしたが、兵士による根気強い取り調べを行った。
また、この犯罪は人気のない場所ばかりで発生しており、目撃者がほとんどいなかった。けれど運の良いことにひとりだけ目撃者を発見することが出来、犯罪の全貌が判明した。
女装した少年がいかがわしい目的を装い、中年男性を誘うのだ。身体の線が細い、まさに少女のような雰囲気にひょいひょいついて行くと、人気のない暗がりに誘い込んだところで豹変するというのだ。
一見、少女に見えても、曲りなりとも男だ。油断した隙をついて殴りかかってくる。
気絶させた後、懐をまさぐって有り金を全て巻き上げる。
これがこの犯罪の一連の手口である。
自業自得の面もあるが、後ろ暗い男性は訴えることもない。
被害者は人相も覚えていないとのことで指名手配する難しい。
実に頭の良い計画的な犯行だ。
今できる対策は住民に注意を促し、巡回の回数を増やすくらいだ。
◇◇数日後の巡回メモ◇◇
また、別口で何の罪もない市民の背後に忍び寄り、身ぐるみを剥いで逃走するという、卑劣極まりない犯罪も報告されている。
巡回する回数を増やすことを更に検討し、ゆめゆめ注意すること。




