侍女 掃除にいそしむ
佳麗な女性たちで構成された自警団の活躍により領地内の犯罪は無くなりました。けれど、悲しいことにこの領地外ではまだ物騒な噂をチラホラ耳にします。
「隣領地を結ぶ街道の領地境で両腕を折られて、身ぐるみはがされた男たちが転がっているという案件がこれで3件目なのですが・・・」
「盗賊どもの仲間割れでしょう? 放っておけば良いではないの?」
領地の外のお話では、流石の侍女も静観しているしかありません。そもそも自警団は彼女本来のお仕事ではありません。お姫さまが気持ち良く過ごせるように環境を整えるのが本来のお仕事です。
有能な侍女である彼女は掃除が大の得意です。自警団のお仕事に比べれば楽なものです。
けれどもやはり一人では大変です。近所の信頼できる女性たちにだけお手伝いを頼みます。
「ちゃんと始末しておいたかい?」
「ええ、間違いなく」
綺麗好きの侍女は本来のお仕事を手伝ってくれた女性に、お掃除の状況を聞きます。
「森の奥に捨ててきたから、後は野犬が処理してくれるよ」
生ごみは使い道がなくて森に捨ててしますが、出た鉄くずなどは潰してリサイクルします。ただゴミを捨てるだけではなく、その後のことも考えています。エコの精神ですね。
「服や小物は灰になるまで燃やしといたよ」
リサイクルできないモノは灰になるまで完全燃焼します。
見えない所に潜んでいるゴミはお掃除が大変です。でも、大好きなお姫様のために優しい侍女はせっせとお掃除を頑張ります。
お屋敷を管理している家令殿は知らないうちに綺麗になった状況に気づき、驚きます。驚きすぎてつい、詰問口調になってしまいます。
「マークしていたはずの他国の密偵の幾人かが消息不明なのですが、何か知りませんか?」
行き成りの質問にビックリしてしまった侍女は偶々隣にいた女性にも聞いてみます。
「アンタ、何か知っているかい?」
「いえいえ、私は知りませんよ。初耳です」
「なるほど、知らないってさ」
自らの成果を誇らない奥ゆかしい侍女に家令殿はため息しか出ません。
「・・・あなた自身はどうなんですか? 街のゴロツキどはワケが違うんですよ」
「姫さまに危害を加えそうな輩にご退場願っただけだよ。無害そうなのは残ってるだろ。ガタガタ言いなさんな」
食い下がってくる家令殿に仕方なく認めます。ついでにお掃除のコツを教えてあげます。
いくら掃除しても気がつくとゴミというものは溜まってしまうものなのです。
実は少しだけお掃除をする余地を残しておくのがコツです。完璧にやり過ぎても疲れてしまいます。綺麗すぎても、落ち着かず息が詰まってしまうものです。
「水清ければ魚棲まず」とも言います。
これからも、根気強い侍女は使えるモノと使えないモノを見極めてコツコツこまめに地道に片付けていくのです。
幸いにして、自警団のお仕事が暇になった幾人かの女性が手伝ってくれています。
領地内の安全を影から見守る奥ゆかしい女性たちのお話は一旦区切って、次は通常の文体のお話へ戻ります。




