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ぶちのめしますわよ、旦那様【領主を継いだので好き勝手やてみたい別冊?】   作者: 堀江ヒロ
番外編・素敵なヒロインの物語

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侍女 見舞いを受ける


 作者のイメージとしては地の文を優しい声の女の子が朗読し、脇で会話部分を年配のご婦人が喋っている雰囲気です。




 計らずも、暴力事件の現場に居合わせてしまったか弱い侍女は恐ろしくて街に出かけることが出来ませんでした。

 儚げな表情で窓の外を見る彼女に家令殿も心を痛め、励ましの声を掛けます。


「先日の件が騒ぎになってしまったので、外出は自粛していただけると助かります」

「あの馬鹿共が仕返しに来るってかい? 望むところだよ。返り討ちにしてやるよ」


 家令殿は侍女を過保護なまでに屋敷に留め置きます。

 今度あのような無頼漢に襲われた場合、吹けば飛ぶような貧弱な女の身ではおそらく太刀打ちできないでしょう。

 下劣な男性に捕まってしまったら、彼女の身にどんなことが起きてしまうのか、男性である家令殿には最悪のシナリオが頭をよぎってしまうのでした。


「くれぐれも、短絡的な考えを実行に移さない様にお願いします。殺人犯となった貴方を捕まえて罰する自信はありません」

「はいはい。分かったよ。屋敷に閉じこもって、おとなしく姫さまのお世話を焼くことにするよ」


 侍女は家令殿の勧めに従い、恐怖を振り払うように一生懸命働くのでした。



 そんなある日、数人のご婦人たちが侍女を訪ねて屋敷にやってきました。

 いたいけな子供を助けるために男性に立ち向かうという勇気ある行動を知った近所の主婦たちでした。

 先日の事件の顛末は治安の悪化を憂う女性たちの間で噂となって駆け巡っていたのでした。

 子供のためには己の身を顧みない立派な行動に彼女らは口々に賞賛します。


「子供を恫喝していた男らを素手で伸しちまったってよ」

「噂だと熊も一撃でぶっ殺すらしいよ」

「どんな化け物だよ。あたしは、そのお噂の女を見たことないけど、どこの者だ? 一度、その面を拝みに行ってみる?」


 しかし、肝心の侍女は恐ろしさのあまり屋敷に閉じこもってしまったと言います。

 少しでも心の支えになればと、その話を聞いた女性たちは揃ってお見舞いに訪れたのでした。中にはあの広場で野菜を売っていた女性の姿もありました。

 その中で一人のふくよかな女性が進み出てあいさつを述べます。彼女らは近所に住んでいる主婦たちだそうです。


「ろくでなし共をぶちのめしたってのは、あんたかい? ああ、申し遅れたね。あたしは興味心で付いてきた単なるおばさんだよ」


 侍女はそんな女性たちを快く迎えます。彼女らは男に立ち向かうには華奢すぎる侍女の身体を改めて凝視して驚きました。


「そんな貧祖な体で男を倒せるのかい?」

「あんな雑魚じゃ、何人来ても同じさ」


 侍女は自分の行動を誇ることなく肩をすくめ、謙遜します。そんな侍女に代表のご婦人がある提案をします。


「ちょいと、あたしと腕試ししないか? あたしは体力には自信があるんだ」

「まさか、喧嘩を売りに来たのかい?」

「なぁ~に、ちょっくら話し合い(肉体言語)するだけさ」

「止めときな。ケガしても知らないよ」


 何やら難しい話し合いを持ちかけてきます。

 行き成りの展開に侍女が戸惑っていると、ご婦人はまずは握手をしようと人懐っこい表情を浮かべ、その豊満な身体で近づいてきました。

 しかし、慌ててしまって転んでしまいます。この土地は慌て者が多いようです。

 恥ずかしげに彼女は立ち上がります。そして分かりやすく説明を始めます。


「なるほど。本物だね。如何だい、あたしらで自警団を立ち上げないか? もちろん、あんたがボスさ」


 その提案とは防犯ボランティアです。

 自分たちの無力を嘆くだけでは何も変わりません。あのような出来事を未然に防ぐことを目的に自分たちで街を巡回するというのです。

 か弱い女の身でも数がそろえば、理不尽な暴力にも立ち向かえるはずです。

 そう提案した女性は農家の主婦でした。彼女自身は日頃力仕事にいそしんでいるため、体力には自信があるようです。

 けれど、他の女性は見るからに弱々しく、荒事には向いてなさそうに見受けられます。


「みんながアンタみたいな腕じゃないんだろ。どうするんだい?」

「頭数をそろえりゃ、何とかなるだろ。不埒な輩を見つけたら、数で囲んでフクロにしちまうんだ。どうだい?」

「見た目は頼りないかも知れないが、辺境の女ってのは強いもんさ」


 しかし、そんな心配は無用だとみんなが主張します。けれど、やっぱり臆病な侍女は受け入れがたく感じます。

 一方で、彼女らの正義感あふれた志に気立てのいい侍女も悩みます。


「街の治安を守るはずの兵士ってどうなってるんだい?」

「まず、絶対数が足りていない。それに練度は最低だ。まあ、腕の立つ兵士は戦争に駆り出されたまま帰ってこないね」

「アンタらに任せるのも不安だし、ちょっと手伝うくらいなら、やってやらないこともないよ」


 慎重な意見の述べながらも結局、情に厚い侍女は手伝いを申し出るのでした。

 街の雰囲気が悪い方向に向かっているのをやきもきした感情を持ちつつも、縮こまって行動に移さなかった彼女らは侍女の自己犠牲ともいえる行為に感銘を受けたのも一端でした。



 みんなの力を合わせれば、治安を回復させて住み良い街づくりを目指せるはずです。


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