未来の上司と部下のお料理教室(七草の節句Ver)
悪戯女「さて、今日は人日の節句です」
我儘娘「何ですか、ソレ? 聞いたことないんですけれど?」
悪戯女「古代中国の風習ですね。まあ、日本では七草の節句と云って、七草粥を食べる日ですね」
我儘娘「それなら、そうと言ってもらわないと。日本人には分かりずらいじゃないですか」
弱腰男「オイラたち日本人じゃないけど?」
我儘娘「アンタは煩いわね。男が細かい事を言うんじゃないわよ。七草粥ってのは7種類の草を入れたおかゆでしょ?」
悪戯女「そうですね。春の七草はセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロの7種類です」
我儘娘「でも、雑草を入れるなんて、貧乏臭い料理ですね。もっと豪華な料理の時に呼ばれたかったのに・・・」
悪戯女「雑草という名の草はありませんよ。豪華な料理は、・・・まあ、うん。諦めてください。豪華な料理は作る場合は手順も面倒なのでグダグダ話をする時間が無くなってしまいますので」
弱腰男「・・・グダグダ話なのか?」
悪戯女「それはそうですよ。特定の殿方が殴られてオチとなるワンパターンばかりじゃないですか」
弱腰男「それって、今回はオイラが殴られるパターンてこと!? って、何で2人共当然って顔してんの!?」
悪戯女「だって、ねぇ?」
我儘娘「そうですよね」
弱腰男「オイラの未来は不幸しか見えないのか!? 兵士のお兄さんは何処? オイラの代わりに殴られて! お願い!」
悪戯女「なら、明るい未来の話でもしましょうか。此方のお話では、あなたは大往生を遂げますよ。良かったですね」
弱腰男「未来過ぎる!?」
悪戯女「まあ、横道にそれるのはそれくらいにして、進めましょう」
弱腰男「うん、深入りしても良さげな気がしないし、そうした方がいいな。
そもそも七草ってどこで入手するの? 田舎なら近所に生えてるモノなの?」
我儘娘「そんなの探すの面倒でしょ。アタシも見たことないから分からないわよ。そこいら辺の草を使っても誰も分からないんじゃない? そうしましょう」
弱腰男「いや、無病息災を願う縁起物だからそれはあんまりじゃないか? それに適当な草を使って食中毒になったらどうするんだよ」
悪戯女「コンビニでパックになったヤツが売ってますよ。今回はそれを使います」
弱腰男「コンビニ万能すぎじゃね!?」
我儘娘「おかゆって残り物のご飯に水を足して煮ればいいんですか?」
弱腰男「いや、それだとおじやになるから」
我儘娘「何? おじやって、鍋料理のシメにご飯入れたやつのことでしょ」
弱腰男「え~と。お米から煮て作るのがおかゆ。ご飯から作るのがおじやとか雑炊・・・らしい」
我儘娘「アンタはまた・・・細かい男ね。どっちでも良いじゃない」
悪戯女「まあ、今回は炊飯器でお粥コースがありますから、それで普通に炊いてください。雰囲気重視なら、土鍋でやっても良いですね。水の分量はお米の5倍くらいでしょうか。
ではお願いします」
我儘娘「お願いしますって、侍女様は料理しないんですか?」
悪戯女「私は管理職なので、あなたがたに仕事を采配する役割なのです」
我儘娘「え~。そんな偉そうで楽なポジションがあったんですか!? じゃあ、あたしも管理職になりたい。
ってことで、アンタやりなさいよ」
弱腰男「何でオイラが? いや、分かったよ。やりますよ。用意した七草っていつ入れるの? そのまま入れるちゃって良いのか? それとも下ゆでするのか?」
悪戯女「塩をちょっと入れたお湯で、10秒程さっと湯がきます。炊けたお粥に湯切りした七草を入れます」
我儘娘「ねえ、ちょっと、2人の距離近くないですか?」
悪戯女「そうですか? 普通ですよ? さて、塩を軽く振ってかき混ぜて出来上がりです」
我儘娘「やっぱり、近いわよ! アンタも何か言いなさいよ!」
弱腰男「確かに、もうちょっと離れていても支障がないのではないのかと思わないでもないかも」
悪戯女「あらあら。ヤキモチですか。どう? こんなワガママ娘は見限ってお姉さんトコロで働かない? お姉さんの地元はここより都会よ」
弱腰男「いや、オイラは・・・」
我儘娘「何、私の下僕を取ろうとしてんのよ! コイツは私のよ!」
悪戯女「あらあら、愛されてますね」
我儘娘「何言ってんのよ!! そんな訳ないじゃない。--何アンタ見てんのよ? タイトルの代わりにアンタをぶちのめすわよ!」
悪戯女「照れ隠しですね。分かります」
我儘娘「んな訳ないわ!! もう年上だろうが上司だろうが関係ないわ! 敬語もヤメよ!」
悪戯女「きゃ~、こわ~い」
弱腰男「あの・・・オイラに抱きつかないで欲しいんですが。その、背中に・・・」
我儘娘「アンタ、ナニ満更でもなさそうな顔してんのよ」
弱腰男「オイラ、そんな顔してないよ!? 出来れば穏便にならない?」
悪戯女「じゃあ、お姉さんがこの娘と円満になるようなアドバイスしましょう」
我儘娘「何デマ吹き込んでるのよ!」
悪戯女「いえいえ、的確かつ素晴らしいちゃんとした助言ですよ。ついでにこの娘の未来も教えましょうか? 作者的なチカラを使って」
我儘娘「あたしの未来なら、あたしに教えなさいよ。 っていうか、何でアンタは顔を真っ赤にして目をそらしてんのよ!」
悪戯女「詳細を知りたがるなんて、見た目通りエッチな娘ですね」
我儘娘「なっっ!? アンタもヘラヘラしてないでこの女に文句言いなさいよ!」
悪戯女「さあ、今こそびしっとセリフです」
弱腰男「本当に大丈夫? え~と、『ツンデレですね。分かります』 って、ますます怒ってるんだけど。その拳の向かう先は?」
悪戯女「では、私はこの七草粥を届けないといけないので、失礼しますね」
弱腰男「えっっ!? こんな状況でオイラ置いてきぼり!? って、結局殴られオチ!?」
この物語はフィクションです。実在する調理法とは一切関係ありません。
侍女殿を含め領地外から結婚式に参列してきた方々はこの後国許へ帰ってしまいますので、彼女の再登場は大分先の予定となっています。
次回はこんな黒そうな彼女らとは全く違った一世代前の、控えめで奥ゆかしいヒロインのエピソードです。
 




