独法師
「ねえ、『ぼっち』ってどういう意味かしら?」
「いきなりどうしたんですか、お嬢さま?」
「変なチャラい、いえ、アホそうな男性が旦那様と話していたのよ」
「・・・え~と。まあ、端的に云いまして、うん。語源はどこの宗派にも属さない僧侶のことを指していました」
過去形ってことは今は違う意味って事?
「いわゆる、人と関わりを持たない孤高の人のことです」
なら、わたくしとは関係のない話ですわね。わたくしには貴方がいますし、国許では色々な先生方に師事していました。交流関係は様々な分野に広がっています。
はっ? もしかして旦那様自身のこと? なるほど。狭い領地では人々との関係も狭まってしまいます。
話をする際は簡潔に結論から述べる。情報伝達ではほうれんそうも大事ですわね。
「お嬢さま。それは部下が上司に報告する時の心得です。『ぼっち』とは、もう正直に申しますが、一人ぼっちのことです。話下手な方なども当てはまる場合があります」
ますますわたくしとは無縁な話ですわ。国際法令の勉強会でも散々討論会をやりましたわよ。コミュニケーション・スキルには自信があります。
「そういう事でもなくて・・・ お嬢さま。やっぱり私も残りましょうか?」
歯切れが悪いわね。彼女は既婚で国許に夫がいます。当然のことながら、帰らなければなりません。
子供じゃないんだから、一人で大丈夫ですわよ。
・・・あれ? ひとり?




